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魔法科高校の神童生
Episode28:出発と歯車
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めちまったら、負けたままだからな。
今までの二科の連中は、過去に劣ってたからって、今を諦めていた。だから強くなれなかったし、そんな奴等なら対等に認めてやる必要もなかった。だが、強くなろうとして、実際に強くなった奴なら逆に、バカにする理由はないだろうさ」

服部は変わらず答えず、さっさと貸し与えられた部屋へ向かっていってしまった。



「……そういえば」
「ん?」

自分の部屋についたのだろう、扉の前に立ち止まった服部は思い出したかのように呟いた。

「桐原…お前はなぜか九十九のことを強調していたよな。あれはなんでだ?」

「あー、あれな…」

何故か言いづらそうに桐原は頭をかいた。それに対して服部は疑問符を浮かべる。そしてその疑問を口にしようとして、しかしそれよりも桐原が口を開くほうが早かった。

「司波兄妹に対しては俺がこの目で見たんだから間違いねえ。けど、九十九に関しては言い切ることができないんだが……」

そこで言葉を切り、桐原は複雑そうな表情を浮かべた。そこから、彼が何を思っているのか、服部に理解することはできなかった。

「…アイツは、司波とは別の意味でやべぇ。アイツ…いつもはボケ面だが、ふとした時にゾッとするほどの殺気をバラ撒いてやがんだよ」

「…あの九十九がか…?」

服部の脳内で思い浮かぶのは、いつもヘラヘラと笑みを浮かべて、しかしやる時はきっちりとやるという掴み所のない後輩の姿。本人と話したことは多くないが、生徒会の間では達也と同じくらい話題になる少年だ。

「ああ。それに、さっきの事故った奴の死体を見ても、九十九は眉一つ動かさなかったぜ? ありゃ、もしかしたら死体に慣れてんのかもな」

「…今年の一年は、異常が多いな」

「そいつはどうだろうな? 先輩たちの中でも十文字会頭とかは実戦を経験してるしな。けどまあ、確かに、やべぇ奴が多いのは確かだな」

三年生がいなくなったら一体どうなってしまうのか、そう思って、服部は重い溜息をついた。



☆★☆★



「……ふぅ」

貸し与えられた部屋について、俺はすぐにベッドに横になった。同室になったもう一人の生徒ーーまあ、森崎君なのだがーーはまだ部屋に来ていない。

「…くそ、頭痛い……」

ズキズキと痛みを訴えてくる頭に歯噛みしながら、手を上に掲げる。

「無頭竜か…さて、一体なにをどう仕掛けてくるのやら」

奴らの卑劣さはエリナからの定期連絡でよく聞いている。だからこそ許すことはできない。奴らが仕掛けてくるのなら、全力で抵抗しよう。危害を加えてくるのなら、殺すことも厭わない。きっと、それが()()に繋がるはずだから。そのためになら、俺は、幾らでもこの身を差し出そう。


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