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イデアの魔王
第六話:『イデア写本』
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 ぎゃあぎゃあと言う喧噪。 俺達三人は怪訝な顔をしながら人ごみをかき分け声のする方へと足を運んだ。 小望はまだ食べかけの朝食に未練があったようだが、俺と京介が揃って席を立つと結局「待ってー!」と言いながら後を追って来たのだ。

 「どうしたのかなぁ?」
 「何かモメてんじゃねえの、大した事はないだろ」

 どうせバカが喧嘩でも始めたのだろう、そんな事を考えながらさらに人ごみをかき分けて進むと、食堂の片隅に一層人だかりが多くなっているのが見えた。 ここからでは窺い知る事はできないが、恐らくはこの人だかりの中心で何かが起きているのだろう、俺は適当に人だかりの一番外側にいた男子生徒――黒い制服に入るラインが赤ではなく青であり、恐らくは二年生だと思われる生徒に声をかけた。

 「何かあったんすか?」

 そう言って軽く肩を叩くと、振り返った二年生は俺の姿を見るなり「な、何ですか?」と緊張した面持ちになったので、俺は少しだけ渋い顔で苦笑しながら言葉を返した。

 「別に変な気使わなくていいっすよ、そっちのが先輩なんですし」
 「あ、ああ……いや、何かあったと言うか、いつもの事って言うかさ」

 そう言うと二年生はその場から少し体をずらし、この場所からでも中央が見えるようにしてくれた。 見ればガラの悪い男子生徒三人が、一人の女子生徒に何かを怒鳴り散らしているのが窺える。 俺と同じようにその光景を見ながら、京介が呆れたような顔で二年生に尋ねた。 

 「……この学校にもあんな奴がいるんですか?」
 「いや、あんなのは例外だぜ?数千人も集まればどこにだっておかしな連中くらい出てくるるもんさ、あいつらは去年の間もしょっちゅう問題ばっか起こしてた連中だよ」

 一緒にされたくないとばかりに嫌な顔をする二年生。 それは俺達だって同じ事だ、小望はともかく俺や京介はこの学院においてあまり真面目とは言えない生徒だろうが、その俺達だってあんな連中と一括りにされるのはごめんだ。

 「……あんな連中でも魔術の適性が高いってんで誰も止めようとしないんだよ。 下手に首突っ込んでこっちが怪我でもさせられたらたまったもんじゃないしな」

 俺達はしばらく不良生徒達の言い分に耳を傾けていたが、その内容と言えば肩がぶつかってスープがかかっただの、クリーニング代を出せだのと言ったあまりにも下らないものだ。 バカのような笑いを浮かべながら、口汚く女子生徒を罵る三人組が服にスープがついた程度の事を気にするはずもなく、ただ単に暴れる理由が欲しいだけだと言うのは誰の目にも明白だった。

 「魔術の適性ねぇ……そんなに魔術に自信があるなら、魔王でもやってみりゃあいいのによ」

 どうにも俺は不愉快な気分になると口調が皮肉っぽくなってしまう癖がある。 俺は席に置
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