第六話:『イデア写本』
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『イデア写本封緘解放!』
「なっ!?」
不意を突いた攻撃、俺はその攻撃を間一髪でかわしたが……流石にこれには驚いた。 標的を失った城山のパンチはそのまま床へめり込み、その場に小さなクレーターを作り出す。 視界の向こうでは不良二人が驚き半分、怯えた半分と言った表情で城山に向かって大声を上げていた。
「バっ、馬鹿、何やってんだ!相手は魔王だぞ!」
大焦りでわめき立てる二人組、しかし城山はだからどうしたと言った表情で俺と二人組を交互に見てから、どこからそんな自信が出てくるんだと言う程自堂々たる表情でこう告げた。
「はっ、魔王だか何だか知らねぇが、ろくにケンカもした事ねぇような坊ちゃんだろうが? そんな奴が学院であんまり調子こいてると痛い目見るって教えてやんだよ」
こいつ、マジモンのバカか? そもそもが魔王なんて魔術適正の高い人間を無理矢理引っ張ってきて在位させているようなものなのだ。 自慢をするわけではないが俺が弱いはずがない事など考えればわかるし、万が一俺が奴より弱かったとして、仮にも一国の魔王に殴り掛かっていくなどまともな思考能力のある人間のやる事ではないだろう。
俺は幼少期のトラウマか何かで城山の脳の成長が小学校低学年で止まっているんじゃないかと本気で心配になったが、奴はボキボキと指の骨を鳴らしやる気満々と言った様子だ。 周囲ではギャラリーの生徒達はおろか、不良二人ですら奴の後先考えなしの行動には最早付いていけないと言った様子で呆れ返っており、二人は俺を一瞥すると人ごみの中に逃げ去って行った。
城山はそんな連中を尻目に、再び俺へと向き直った。
「イザヨイとか言ったな、今この場で俺と魔術で決闘しろ!」
「……アンタ、もしかしてふざけてるんじゃねーよな?」
俺は呆れと言うよりはそうであってくれと言う希望を込めて城山に問い掛けたが、奴は「何がだ?」とまるで俺の方が何かわけのわからない事をほざいていると言わんばかりの態度だ。
「いやもういいわ、わかったよ、決闘だか何だか知らんがやってやるからもう口を開かないでくれ」
俺は基本的に魔術を使ったケンカは好きではない、俺の力は色々と特殊すぎて制御が難しいし、何より疲れる。 とは言え流石にここまでバカな相手だと口で説得する方が疲労が大きいだろう。
(全く、昨日相良さんから聞いた制約をこうも早く思い返す事になるなんて)
内心でため息をつきながら、俺は目の前で今か今かとこちらの様子を窺っている城山へと目をやった。 いくらバカとは言え奴は既に『イデア写本』を解放している、魔王と呼ばれようが所詮は人間なのだ、魔術を使わずに魔術師を打ち倒すなどできるわけがない。
と、なれば。
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