第六話:『イデア写本』
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いてきた茶漬け……恐らくはもうべちゃべちゃになってしまっているであろうそれの事を思い返し、チッと舌打ちをしながら人だかりの中に足を踏み出した。
「ダメだよ、桜花」
「……ちょっと注意してくるだけだよ、ああ言う連中はちっとビビらしてやりゃすぐ黙るだろ」
背後から飛んできた小望の声に適当な返事を返し、人だかりをかき分けていく。 野次馬の生徒達は俺の姿を見るなり道を開けてくれたので中央まで行くのにそう苦労はせず、俺は現場にたどり着くなり背後からチンピラ三人組に声をかけた。
「おいあんたら、何やってんだ」
「あぁ?」
そう言って振り返った不良生徒の一人……まさに脳みそ筋肉と言う言葉が形を持って動き出したような男は、俺の制服に入る赤いラインを見て即座ににやにやと不快な笑みを浮かべた。
「何だ一年?先輩に教室の場所でも聞きたいのか」
「生憎間に合ってますし、この状況で俺が何を言いたいのかも理解できないんですか、先輩?」
そう皮肉っぽく言ってやると、脳筋男は額に青筋を浮かべながら「テメェ、誰に向かって口聞いてやがる!」と大声でがなり立てた。
(誰に口を聞いてやがるなんて、普通ならこっちの台詞なんだが)
俺は自分の権力を振りかざすような事はあまりしないし、それで無意味に他人を威圧するような事はもっての他だと思っているが、それでも自分の立場とその影響力くらいは理解しているつもりでいる。 こんなチンピラ相手には多少立場を利用して脅すくらいの事をして丁度いいと思っていたのだが……。
今にも殴りかかってきそうな表情の大男、しかしその背後から残りの二人が姿を現し、おずおずと大男に声をかけた。
「お、おい城山……」
「何だよ!?」
「何だよってあれ、噂の魔王じゃねえか」
そう耳打ちされ、大男……名を城山と言うらしいそいつはまるで目からビームでも出したいのか言わんばかりに俺を凝視して来た。 正直不快感が半端ではないが、今それを口に出すほど俺はバカじゃない。城山はしばらく俺を見つめた後、唐突にばんと両手を叩き合わせて大声を上げた。
「ああ!お前、時々テレビで見るあれだ、あいつ!」
「名前は思い出せねーのな、十六夜だよ」
こんな奴に下の名前で呼ばれるのも胸糞悪い。 俺は相手の頭の悪さに呆れながら、短く苗字だけを告げた。
「こいつにケンカ売るのは絶対まずいって」
「……おい城山、行こうぜ」
そう言って城山を促し、この場を立ち去ろうとする不良グループの二人。 しかしその直後、大事にならなくてよかったと俺が肩の力を抜いたその時だ。 城山はその小岩のような拳を大きく振りったかと思えば、二人の言葉など意に止めずとばかりに俺に殴り掛かって来た。
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