第一物語・後半-日来独立編-
第七十四章 終息へ向かう時《2》
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だ回復速度を高めるだけの治癒系術で、手術となれば一度黄森に戻らなければならない。
戦闘艦を最大速度で航行させても、病院に辿り着くには三十分くらいと言ったとこか。
長い。そう思った。
辰ノ大花の病院へ搬送も考えられるが、馬鹿馬鹿しいので止めだ。
「日来長が助けてくれると約束してくれた」
繁真は言った。
眉を立てた央信は疑問を投げ掛けた。
「日来の長が? 何故だ」
「仲間を傷付けてしまったと謝られた。おかしな話しだ、傷付けたのはお前じゃないと言うのに。責任感ゆえなのだろうな」
「幸せな頭してンな、日来長は。オレならほっとくね」
「お人好しということか。だがまあ、助けてくれるならば文句は無い」
それを聞いた王政が驚きから目を見開いた。
繁真は特に反応を見せなかったが、彼女とは違い王政は何時もとは違う何かを感じ取ったのだろう。
戸惑ったような言葉から始まり、
「お、長が素直なの……珍しいっすね。あれっすか? 天魔の力使い過ぎて頭イカれたンすか?」
「そんなに殴られたいのか」
「ちがっ!? 誤解っすよ! オレは心配してるンす」
「今の私が幾ら弱っているからといって、系術無しの格闘戦ならばまだ私の方が上だと思うが」
半目で睨む央信。
長からの威圧を受けた王政はとっさに両の腕で顔を隠し、視線を防ぐようにした。
二人を見ながら優しく清継の頬を撫でる繁真は、なるべく負担の掛からないようにと自分は無駄に動かなかった。
自分には剣術や格闘術があっても、医療技術は持ち合わせていない。
大抵の傷は治癒系術で治せるために医療の知恵を捨てたのだが、改めて仲間が傷付いている姿を見るとそれは間違いだったのではと考えさせられる。
染々としていた繁真だったが、たまたま空を見上げ、落ちてくる者が目に入った。
「玄次郎殿ではないか」
天桜学勢院の制服を着ているのと、外見から分かった。
こちらの声が聞こえたのか、おおお――い、と言いつつ落下してきた。
数秒後。
緩和系術の連続発動で速度を殺していき、少しの時間、清継を見ると更に緩和系術を発動した。
衝撃というものはなく、着地の音さえも立たせずに甲板へと足を着いた。
傷付いた清継への配慮だ。
「携帯用の治癒系術で済ませてんのか」
「回復を高めるのと痛みを和らげる効果がある。ただ」
「言わなくていい言わなくて。大体のことは想像出来るし、それによお」
玄次郎は自分が落ちてきた空を見た。
何か来るのか。
釣られて三人も見上げ、太陽の光がまだ射している空の下。青い光と共に来る者がいた。
央信、繁真、王政の三人のうち、いち早く気付いたのはやはり繁真で。
「あれは……日来長か」
「敵意のねえまま俺達の前に来るんだ。何かしらのことをするんだろう
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