第一物語・後半-日来独立編-
第七十四章 終息へ向かう時《2》
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
」
などと言ってるうちに、竜神の身体は見て分かる程に薄くなっていた。
吸収の速度がそれ程までに速いということか。
全ての流魔を吸収し終えるのも後少しだ。
これを終えれば、黄森の女子学勢の傷を治してから奏鳴の元へ行ける。
それまではどうにか耐えてくれ。
動き出しそうな足を抑え、その時を今か今かと待つ。
竜神の流魔を全て吸収し、奏鳴の内部流魔も回収出来たのに時間は掛からなかった。
流魔が吸収されていく度に竜神の存在は薄れ、次第に見えなくなっていった。音も何も無く、ただ消えたのだ。
辰ノ大花と黄森の間で起きた今日の騒動。
消えていった竜神と共に、それも自然と消滅していた。
黄森の全戦闘艦は撤退していき、地上に残る黄森の者達も停泊していた、または自分達を回収しに来た戦闘艦へ次々と乗り込む。
敵に背を向ける黄森に襲い掛かる者は誰一人として存在せず、ただ冷たく鋭い視線のみが向けられた。
足取りは鉛のように重たいように見え、両者共疲労はあった。
この事態が何をもたらしたのか。
それは両者との溝だ。
深くて暗い溝。
人によっては生涯忘れることのない溝となり得るものを、黄森は行き過ぎた行為によってつくってしまった。
地域間であっても問題は多々存在する。
全てを解決することは出来無いが、少しでも解決出来るように手助けが出来るならば。
セーランは一人、思った。
●
地上から空を見上げる黄森の長、央信は竜神が消えていくのを目に映した。
自分を狙うものがいなくなり、ほっと一息吐き、支えてもらっている王政を頼りにどうにか立ち上がった。
脚が震え、上手く自立出来無い。
「格好悪いものだな」
「天魔の力使ったンすからしょうがねえと思いますけどね」
「結局、私は宿り主には敵わないということか。全く……憎いな……」
実力差が存在し、一線の向こうに踏み込めない。
先に踏み込んでいった日来、辰ノ大花の長らが羨ましくも憎かった。
しかしながら少しは、辰ノ大花も緩んだ緊張を張り直せるいい機会となった筈だ。
幾ら強力な黄森であっても、国同士の戦争でたった一地域が神州瑞穂という広大な領域を死守するには無理がある。
せめて自分達の居場所くらいは守れるくらいの、意思を常に持ち合わせていてほしい。
震えが治まり掛けた脚を動かし、隣、離れた場所にいる二人の女子学勢に身体を向ける。
「清継の様子はどうだ」
「勢いを殺せぬまま甲板に背から激突したために数本折れた骨がある。吐血の原因は折れた骨が内臓に刺さったために起きたのだろう」
「見る限り呼吸はあるようだが万が一の場合も考えられるな」
口の周りに付いた血を拭き取った後が見られ、繁真によって応急処置が清継に施されている。
た
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ