禁断の果実編
第87話 王の力
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『きゃあああああああ!』
暴風に翻弄されるも、月花はどうにか態勢を立て直した。
そして、見た。
『うそ――』
ミサイルが、止まっている。まるで大気に縫い止められたかのように。
ミサイルはぶるぶると震え、何かに耐えかねたかのように粒子となって砕け散った。
『これが我らが王の力だ! フフ、アハハハハハ!』
(王さまが、助けてくれた、の?)
――月花はもちろん、鎧武もバロンも知らない。ミサイルは砕け散ったのではなく、ミサイルを放った米国に瞬間移動し、北米に甚大な被害を出していたことを。
(王さま、こっちに来てるの? じゃあヘキサと貴虎お兄さんも? どこ!? むかえに行かなきゃ!)
月花はパルプアイを最大限まで使って、あちこちのビルの屋上を見回そうとした。
『ムシュデブリデ、グリンシャ』
『待て!』
はっと地上を見下ろす。倒れたと思った牛角のオーバーロードが立ち上がり、闘牛のように鎧武とバロンにぶつかっていた。
(ああん、もう!)
月花は翼を翻し、彼らに加勢すべく急いで地上に戻った。
時は遡る。
ロシュオによって地上世界に戻された貴虎と碧沙も、タワー屋上からミサイルが飛んでくる様を見ていた。
「兄さん…っ」
あれだけのミサイルなど、いくら防御に特化したメロンアームズでも防ぎきれるものではない。
せめてもの抵抗に、貴虎は碧沙を抱き込み、ミサイルに背を向けた。この身が妹の盾になればそれだけでも――
『ここはレデュエの口車に乗ってやるとしよう』
するとロシュオの手に斬鉄剣のような武器が現れた。ロシュオがその武器をかざすや、ドーム状に凄まじいソニックブームが広がった。
貴虎は顔を上げ、愕然とした。ミサイルが、空に縫いつけられたように、全て止まっていた。
ロシュオが斬鉄剣を一薙ぎした。それだけで、ミサイルは震え、消滅した。
脅威が、消えた。明らかに、この白い王の力によって。
「この街を、守ってくれたのか――?」
貴虎は碧沙を離しながら立ち上がった。
『守ったのはレデュエの城だ。あやつにはまだ重要な務めを託してある。もはやお前たちを捕えておく意味はない。どこへなりとも去るがいい』
「なに?」
『長たる者の務めだ。自らの世界が滅びていく様をその目で見届けよ』
ロシュオが歩いていく先に、迎え入れるようにクラックが開いた。ロシュオはクラックを跨ぎ、ヘルヘイムの森へと去って行った。
貴虎と碧沙は顔を見合わせ、同時に、タワーの最上階から、街の変貌を見渡すしかなかった。
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