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イデアの魔王
第二話:始業式
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そしてその保護者の皆様、このアナムネシス魔導学院の新たな仲間となる皆さんを我々在校生一同は歓迎を持って迎え入れようと思います』

 静かに、しかしはっきりと響き渡るその声で五十嵐さんは祝いの言葉を述べ、この一年間の大まかな行事やスケジュール等を説明していく。 何と言うか、本人の真面目さが浮き出るような言葉であったが、それでいて所々に話の本筋を逸らさない程度の小さな冗談等を織り交ぜたそれは決して真面目と言うわけではない俺が聞いていても飽きないものだった。

 『最後に……皆さんには、この歴史あるアナムネシス魔導学院で多くを学び、いずれは優秀な魔術師、魔導研究者等、この日本魔国を牽引する人材として活躍していってもらいたいと思います。本日はご入学、本当におめでとうございます』

 そこまで言い終わると五十嵐さんは一礼をし、そして新入生達の拍手を浴びながら檀上を降り、傍らでスタンバっていた相良さんへと拡声器を手渡した。 相良さんは拡声器片手に壇上へと上ったが、基本的に大人もしくはそれに準ずる人間を対象に作られたであろう演台は、小学生程度の身長の相良さんの鼻から下までをすっぽりと覆い隠してしまい、学生達はまたもぶっと小さく噴き出してしまった。

 『えーとですね、私からはこのアナムネシスで生活を送る上での注意点をいくつか言わせていただこうかと思います』

 そう言って語り始めた相良さんの話は、学校の主立った構造の話から、保健室の利用規約、魔術を使った生徒同士の決闘に対する制約等に始まり、次に学校の七不思議や各教師のあだ名とその由来、終いにはかつての不良生徒達が修学旅行で残した武勇伝等について語り始め、結局その途中で介入してきた教師陣数人によって半強制的に舞台裏へと引きずり込まれた。

 『だから私は彼女を壇上に立たせるなんて反対だと言ったんです!』『いや、他にやりたいと言うものがいなくてですね……』『会長!いくら何でも「吉崎先生の生首」の怪談話なんて今する話じゃないですよ!』『は、離せーっ!私にはまだ可愛い後輩にあの伝説の不良、竜造寺先輩の武功を伝え聞かせると言う義務が……』

 舞台裏からはしばらくそんな、聞いている側からしてみればさっぱり意味のわからない喧噪が響いていたが……しばらくするとそれも収まり、舞台裏から飛び出して来た教師の一人が進行役の教頭へと何かを耳打ちした。

 教頭は何やらはぁとため息をつきながらも、手元のマジックスクリーンへと視線を戻した。

 『えー……少し問題があったようなので在校生挨拶はここまでとし、新入生挨拶へと移ろうかと思います』

 教頭がそこまで言った時、唐突に小望がくいと俺のそでを引っ張り、俺はそれに小さく「わかってるよ」とだけ返した。 新入生代表の挨拶、と言うのはどこの学校でも入試トップ通
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