第一話:ヘンな二人組
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つついている。
「お前、そんな病院食みてーなもんばっかよく食ってられるよな」
「桜花が味の濃いものばっか食べてるだけですー、そのうち身体壊しても知らないからね」
「へーへー、ったく健康ブームってのはどうしてこうも昔から廃れないもんかね、健康に気ィ使って好きなもんもろくに食えねーんじゃ世話ねーや」
本当、世の中潔癖主義者って連中は全然いなくなる気配がないもんだ。 やれ健康に気を遣えだの、やれ外面や世間体がどうのこうのだのと、そんなに清廉潔白である事が大事かね。
◆
その後、俺と小望が弁当を喰いながら他愛もない会話を交わしていると、唐突に鈍い衝撃と共にがたんと言う音が車内に響き渡った。 ふと外を見れば窓の外に移る光景はもう高速で流れて行く事はなく、そこに映るのは広大な敷地、そして今まで生きて来た中で一度も見た事がないほど巨大な建造物だった。
「うわー、話で聞いてたよりずっと大きいね」
「距離感覚がおかしくなりそうだな……」
感嘆の声を上げる俺達の傍らで、学生達は同じようにざわめきながらも一人、また一人と列車を降りて行く。 俺はしばらく席に座ったままその光景を眺めていたが……やがて人影がまばらになって来ると傍らに置いたトランクを持ち、席を立った。
「んじゃ、俺らも行くとしますかね」
「うん、でもその前に」
「あ?」
そう言って小望は制服のポケットに手を突っ込むと、その中から淡い桃色をした何かを取り出した。 見るとそれは小さな髪留め……とは言っても決して安っぽい印象は受けない、どこか上品な印象の漂うそれだった。
「はいコレ、桜花の入学祝い……入学おめでとう、桜花」
そう言ってにっこりと笑いながら俺の手に髪留めを握らせる小望。 俺はその笑顔に「う、うん、アリガトウ」と言葉を返すと、慌てて小望に背を向けトランクを開き中をまさぐったが……。
「……」
「べ、別にお礼がほしくてやったわけじゃないから……その、ね」
「ちげーし、何か忘れ物してないか不安になっただけだし、バーカバーカ」
……一段落ついたら、今度昼飯でもおごってやろう。
俺はそう心に決めるとトランクの蓋を閉め、何だか気まずそうな顔の小望と一緒にバスを降りた。
「小望」
「何ー?」
整えられたアスファルトの道、そこに一歩足を踏み出しながら、俺は短く小望に声をかけた。 きょとんとした表情で俺を見つめ返す小望から顔を逸らし、がりがりと頭を掻き毟る。
「……入学おめでとう」
「ふふ、どういたしまして」
ざわざわとした学生達の喧噪と、その学生を誘導する教師達の声がひっきりなしに飛び込んで来る正門前。 俺と小望はちらと顔を見合わせ…
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