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或る皇国将校の回想録
第三部龍州戦役
第五十話 かくして宴は終わる
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したのだ、貴様も分かるだろうに」
 
「は」
 豊浦も目を伏せる。
「閣下、騎兵第三旅団は再集結完了、これより敵防衛線を再攻撃し、主力の後退支援を行います。先遣支隊は本部に直撃こそ免れましたが爆撃の被害を受け、集結まで時間がかかるようです」
 長隈情報主任参謀が報告をすると戦務参謀の荻名が呻いた。
「厄介だぞ、あれは。水軍の龍兵で対抗できるのか?」

「それは分からぬ、だが御国が最後まで立っている様にせねば我らも倒れる」
 豊浦が鋭い視線で戦務主任参謀を睨む。
「――だからこそ、我々は間もなくくる破滅に対し、最善を尽くさねばならぬ。
行くぞ、これから忙しくなる。くれぐれも導術共を潰さんようにせよ」
そう言うと馬に鞭をくれ、宿将は前線へと向かっていった。



同日 午前第七刻 本営絶対防衛線周辺 近衛衆兵鉄虎第五〇一大隊
大隊長 新城直衛少佐


「大隊長殿、第五旅団潰走します!」
 ――知ったことか!

「敵平射砲が前面に押し出してきます!」
 ――まだ配置についていないのならば敵と乱戦に持ち込めば良い!

「導術総員に伝達!」
 自棄と覚悟の狭間にある新城が全軍突撃を告げようとするが――

「お待ちください!龍州軍司令部より全隊へ!全隊撤退せよ!
龍爆ニヨリ第二軍砲兵隊半壊セリ!敵、師団規模ノ予備隊ニヨル攻勢開始!
渡河点ノ防衛ハ困難ナリ!全軍撤退セヨ!繰り返す!全軍撤退セヨ!」
 本部附き導術兵が叫ぶ
 怒気に顔を歪めた新城に背後から声がかかる。
「してやられたわけだ、我々は」
 副官らしき大尉の肩を借りて、額から血を流した美倉准将が現れた。片足を引きずり、片腕をだらりと伸ばしている姿はまさに満身創痍である。

「閣下、御無事でしたか」

「部下達よりは、な」
 美倉は不機嫌に唸って応える。
「第三軍は近衛が担当してる敵旅団を後方から突破して後方を扼する形で街道に沿って撤退するつもりらしい。
我々は龍州軍の担当戦域を通過し、総軍司令部と合流しようと思う」
 幸い、服を煤けさせている以外は目立った負傷のない副官は淡々と告げる。
「――成程、それでは、我々も御一緒させていただきます」
 つまるところ、龍州軍司令部が自軍と近衛総軍が真っ先に撤退するように指示を出したという事だろう。まぁそれは当然である。集成第二軍は遅滞戦闘を行わねばならないし、第三軍は敵陣中に突出しすぎているし、反攻主力として再編された以上、現状では最も単独戦闘能力が高い軍だ。この二軍はこの戦況を整理せねばならない役目がある。
「すまぬが、第五旅団の指揮権は貴官に預ける。情けないが、私はこれでは役立たずにしかならない」
 美倉はそう告げると再び後方へと副官と共に下がって行く。






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