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或る皇国将校の回想録
第三部龍州戦役
第五十話 かくして宴は終わる
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進む敵とそれに翻弄されながらも応戦する猟兵大隊を見ながら尋ね、メレンティンも熟練の将校らしく落ち着き払った様子で応える。
「龍兵はもう間も無くです、騎兵達は半刻程かと。」

「――そう、やられたわね。結局、二部隊も入り込まれ指揮系統は完全に崩壊した、勝ってもこれでは戦果拡張は不十分にならざるを得ない。また、今回も決定的な勝利は得られないわ、それも目前に見えていたのに」
 <皇国>軍人が聞いていたら憤死しかねないような事をユーリアはなかば芸術家のような口調で言った。
「殿下、この状況で勝った後の事をお考えになられるだけ、でも素晴らしい将器かと」
 その天才性と完璧主義者の危うさを同時に感じ取りながらもメレンティンは彼女に感服の意を示す。そうした危うさを埋めるのが自身の役目であるとメレンティンは信じており、だからこそユーリアも彼に全幅の信頼を寄せているのだ。
「貴方が居るからよ、クラウス。さぁ、あの健気な大佐を助けてあげなさい、指揮権を預けるわ」
 四苦八苦している事務方の大佐に視線を向け、美姫はくすり、と微笑した。
「はい、殿下」
 微笑を浮かべ、総司令官の命に頷いた参謀長は彼らを掌握せんと馬に乗り、駆け出そうとし――天を仰いだ。


同日 午前第六刻 東方辺境領第21師団司令部防衛戦区域
集成第三軍 先遣支隊 支隊長馬堂豊久

 先遣支隊は思わぬ幸運に欣喜雀躍した。
 迂回突破に成功した西州騎兵第三旅団が敵猟兵聯隊の一部を潰走させ、そのまま援軍として駆けつけたからだ。彼らも損耗していたが、それ以上に損耗し、残余千名超しか残っていない胸甲騎兵達へと襲いかかった。

「――支隊長殿!第十一大隊が猟兵大隊へ突撃を開始しました!
第二大隊はこれに呼応し司令部へと躍進を開始!」
情報幕僚が興奮を隠しきれずに告げる。彼らが集まった支隊本部もまた騎兵中隊と鋭兵中他の二個中隊の警護の下、最前線にて指示を飛ばしている

「大変結構!第二大隊に注意せよと連絡を」
 ――ここで一撃を与えれば十分だ。騎兵が来たという事はここで拘束しているだけでもう間もなく主力も突破するという事!
眼前に転がり込んできた勝利の兆しに豊久は興奮を抑え込みながら判断を下す。
「――お待ち下さい!第三軍司令部から緊急伝達です!来襲セリ!敵龍兵、約百匹ガ南進セリ!」
 舌打ちする。昨日の龍兵は総計千匹ほど、つまりは主力は変わらず、浸透部隊に擾乱攻撃を仕掛けるだけにとどめたという事だ。
 ――糞っ!もう引き際か?否、まだだ!もうひと押ししてからだ!
「導術!各大隊に伝達!散開しながら進撃せよ!龍兵の通過後は順次後退準備!軍主力と合流するぞ」


同日 午前第六刻 本営から西方約一里 近衛衆兵第五旅団
第五旅団長 美倉准将


「進め!我々
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