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或る皇国将校の回想録
第三部龍州戦役
第五十話 かくして宴は終わる
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追い回されるくらいならば、いっそ騎兵の如く総員吶喊するのも手かもしれません。」

「――ッ!」
 豊久は信頼する首席幕僚の意見に顔を歪める。
 ――不利な賭けにでられない、か。 ここがこの方の限界だな。
 冷徹にそう分析した首席幕僚は言葉を継ぐ。
「現状、数では我々が勝っています。予備を含め、支隊総力にて司令部を突く事はけして戦理に外れたものではありません」

「・・・・・・」
 喘ぐように息を吸う支隊長を見て、大辺は瞑目する。
 ――根拠さえ示せば乗るだろう、このままでは龍爆の餌食だ。
「支隊長殿、このままでは我々は戦闘中に龍兵の爆撃に晒される可能性が高いのです。かくなる上は多少の危険を犯してでも、敵に接近し、味方ごと爆撃すると言う危険を犯させるべきです」

「――だが」
 苦しそうに言葉を振り絞る豊久を遮り、秀才参謀は告げる。
「支隊長殿、こちらが相手をするのは司令部です。敵軍も味方を巻き込むような危険を冒すことはできません、剣虎兵を擁する我々が司令部を攻撃するのならばその最適解は敵と混淆された白兵戦に持ち込む事です」

「・・・・成程な」
最後の拠り所となる薄弱な根拠を示された豊久は決断する。
「分かった、首席幕僚の具申を採用する。支隊本部及び、全予備隊を主力と合流させる。
先遣支隊全隊に伝達を行え!」


同日 午前第五刻半 <帝国>陸軍 蛮族鎮定軍 本営
<帝国>陸軍元帥 ユーリア


 近衛浸透突破集団は危機に瀕していた。それを呼び込んだのは、カミンスキィが派遣した胸甲騎兵一個大隊である。
 客観的に見ても、五〇一大隊は五百名の騎兵を屠るには十二分な打撃力を持っており、導術管制を活かせば訓練不足もある程度は補強できるものであった。
 もちろん、そうでなくては此処まで来られなかっただろう――だが、問題は敵の方針だった。
カミンスキィが命じたのは、第一旅団本部の確認、或いは浸透した戦力を視認したら即座に本営(・・)へと通報する事だった。
 敵は近衛の攻撃による損害を受けながらも即座に転身し、一個小隊弱――約二十名ほどを取り逃がす事になってしまったのだ。先遣支隊の攻撃を陽動代わりに、本営を殲滅する構想はまさに時間との勝負となっていた。
「恐れるな!此処を退かば〈帝国〉の恥となるぞ!」
 今まで一度も戦闘を指揮した事がない輜重大佐が応急防御隊を指揮し、吠える。
「頭を潰せば猛獣使いも烏合の衆だ!我等、胸甲騎兵の何たるかを示す時は今だ!」
 バルクホルン少佐の胸甲騎兵大隊が巧みに彼らの献身に答えようと動く。 そして、彼らを率いているのは――肩を貫かれた若い猟兵少尉が叫ぶ。
「退くな!退くな!東方辺境姫殿下が直率しているのだ!」
 
「後どれほどだ?」
 ユーリアは隊列を組まずに
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