第三部龍州戦役
第五十話 かくして宴は終わる
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打開を考察している。
――あまりにも火力が貧弱すぎる、こんな風に彼らを送り出すなど自分が情けなくて涙がでてくる。
祖父の教えである“指揮官は苦しい時にこそふてぶてしく笑え”を忠実に実践すべく笑みを浮かべているが、それは逆に言えば追い詰められ、胸を反らして笑みを浮かべながら薄氷の上を恐る恐る歩いているという事である。
馬堂豊久はその産まれもった記憶の所為で多分に神秘主義的な面を持っていたが、戦場で第一に祈りをささげる御神体は神や運命などといった概念ではなく、大砲とそれを動かす彼の部隊であった。
「――我々が主導権を握ったまま押し切れると思っていたのですがね。
流石は戦姫の切札、東方辺境領第三胸甲騎兵聯隊と言った所でしょうか。あれ程に動く事が出来るとは」
彼が頼りにしている首席幕僚もやはり顔を強ばらせている。膠着化した最大の要素は猟兵大隊と連携した胸甲騎兵聯隊の動きだった。積極的に支隊本部を潰そうと攻勢に出ることは想定されていたが、剣牙虎による牽制で足を止めさせる事で打開しようと支隊本部は考えていた。
実際、それは有効である事は示された。損害比は通常の銃兵部隊では有り得ない事に、優位を得ており、東方辺境領胸甲騎兵聯隊は既に三割近い損害を受けている、それでもなお、果敢に迂回を狙い、牽制することで銃兵部隊の前進を阻んでいるその姿は驚愕に値するものである――あるのだが、それ以上に砲兵部隊の到来が危険視されている。
騎兵砲であっても一方的に散弾を浴びせられたら剣虎兵の得意とする白兵戦に持ち込む前に前衛が崩壊する。
幸いと言うべきか初手の奇襲でどうにか司令部護衛隊の砲兵小隊を壊滅できたが砲自体は無傷であるし、司令部直轄の砲兵聯隊はそう離れていない場所に居る。
「良いことを教えてやるよ。最悪の事態を想定すればそれは的中するものだ」
ひどく老けた声で若い支隊長が発した言葉に首席幕僚が尋ねる。
「――北領の戦訓ですか?」
「そうさ、手痛い損失を埋めるにはとても足りないけどな。――まずいな、そろそろ龍共がくるかもしれない。砲兵連中は反攻主力相手に釘付けの筈だが師団長の事だ、平射砲くらいなら持ち出させるかもしれん」
「こちらも増援が到着すると良いのですが龍兵が飛来したらそれもあまり意味がありません――近衛の方は無事でしょうか」
「――どうだろう、新城ならば俺が考えている程度の事ならば対応策を考えていると思うが、こっちからはどうにもできなんだ。残念だが、現状の事で俺の処理能力は一杯一杯だ」
聞くだけだとただの軽口だが、その視線は、血を流しながら前進している兵達を脳裏に刻みつける様に戦場へと向けられている。
「支隊長殿のおっしゃる通り、こちらの攻撃を無効が予想していたのならば今の優位も敵の想定内のものでしょう。このまま
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