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或る皇国将校の回想録
第三部龍州戦役
第五十話 かくして宴は終わる
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――実のところ、この時攻撃に投入された部隊は西州騎兵第三旅団であった。
〈皇国〉陸軍の規模と消耗の所為で〈帝国〉基準では聯隊規模になっていたが、モルト大佐の苦労によって辛うじて保たれていた統制を崩壊させるには十分なものであった。


同日 午前第六刻過ぎ 〈皇国〉陸軍集成第三軍司令部


「閣下!西州騎兵第三旅団右翼突破ニ成功!敵聯隊本部壊滅!」

「駒州銃兵第九旅団より伝達!我ラ〈帝国〉軍部隊ヲ壊乱セリ!」

「先遣支隊より伝達!敵師団司令部ノ抵抗堅固也!増援ヲ求ム!」
 軍司令部は将校と導術兵達が導術の声が飛び交う。
「第十ニ旅団に独立第四二八平射砲大隊を麾下に加え、第九旅団の支援に向かわせよ!
騎兵第三旅団に敵司令部位置を伝達!」
「伝達不可能です。突撃により騎兵旅団の導術達の集中が乱れております。ですが予定通りなら彼らはそのまま師団司令部に向かうはずです」

「ならば念のために突出した銃兵隊を支援に向かわせよ――まったく忙しいものだな」
導術利用の即時性が齎した弊害(?)を愚痴る宿将に、若い参謀が苦笑する。
「閣下。即座に戦況を把握出来るのですからそう言わないで下さい。」
「ん。それで龍州軍はどうした?」
「再編を終えた二個旅団を中心に防衛線を堅持、予備隊の一部を集成し、第二軍の予備隊と合流させるべく北進させています。」
現在の優勢がいかに脆いものであるのかを、昨日思い知らされた第三軍司令部は張り詰めた様子で迅速に前進を続けていた。



同日 午前第五刻半前 第21東方辺境領猟兵師団司令部 防衛戦戦域
集成第三軍先遣支隊 支隊長 馬堂豊久中佐


師団司令部周辺は断続的に響く銃声と咆哮に満ちていた。
「――もはや隠密性の保持は不要だ、最悪でもこの司令部を潰せば俺達は与えられた任務を十分に達成した事になる」
第三軍の攻勢再開を受け、そう宣言した支隊長・馬堂中佐は火器の使用を許可したのである。火力の優越という優位を敵が得ている以上、総力をあげて、短期決戦に持ち込むべきだと考えたからである。
 銃兵達が次々と射撃を行い、剣虎兵達はその脇を駆けて突撃を開始する。
応戦する〈帝国〉の猟兵達は半方陣を組みながら必死に応戦している。その傍らを抜刀した胸甲騎達が側面に回り込もうと駆ける。

 〈皇国〉の銃兵達は再び緩やかに後退を開始し、剣虎兵達は猟兵の戦列を一通り蹂躙すると再び集結して銃兵達の側面を固め、騎兵へと挑みかかる。
 その隙に猟兵達も戦列を組み直して猟銃を構え、騎兵達は猫を振り払いながら後方へ退く ――この繰り返しであり、全般的に見れば明らかに膠着状態に陥っていた
「――まずいな、砲兵が出てくる前に片をつけないとこちらが囲んで警棒で叩かれる」
 馬堂支隊長は唸りながら現状の
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