姫君-アンリエッタ-
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飾りなだけの存在だとアンリエッタは自覚していた。そんな事を考えていたら憂鬱な想いが溜め息となって彼女の口からこぼれた。
「ゲルマニア皇帝との…はぁ…わたくしの知らないところで話がどんどん進んでいくのね」
その行為が王女としてあるべき姿ではないということでよほど不満なのか、マザリーニは咳払いをして注意する。
「姫殿下ともあるうお方が臣下の前で溜め息など…。本日14回目ですぞ」
「いいじゃない。ゲルマニアでは大人しくしていたのですし!あなたの言う通り……ゲルマニアに嫁ぐことになるのですから」
国のためとはいえ、自分がゲルマニアに嫁ぐことにアンリエッタはとても乗り気じゃなかった。憂い顔で今の言葉を言ったのがその証拠だ。
「…仕方ありますまい。このトリステインにとってゲルマニアとの同盟はなくてはならないことなのですから。殿下もご承知のはず。このトリステインに、例の怪獣なる存在の脅威は無視できないもの。しかもその上、現在のアルビオンでは王政に反対する阿保共の革命の魔の手も及ぼうとしているのです」
「ええ、この国を破滅させようとした怪獣はもちろん、私もあの『レコンキスタ』なる者共の存在を許せません。例え始祖がお許しになっても私は許しません。
こんな時こそ、私たち各国の貴族も国内の貴族も、そして平民たちも力を合わせてこれらの危機を乗り越えなくてはならないと言うのに…はぁ」
再びため息を漏らしてしまうアンリエッタに、マザリーニは困ったように言った。
現在トリステインでは、対怪獣対策会議を幾度か執り行った。しかし、結果は望ましいものではない。国費が足りなくなったために軍の増強は望めない上に、『私には自分の領土の民たちが心配ですから…』と領内の平民たちを守るという名目の下、遠回しに自分が怪獣との戦いに出ることを避ける者が数多くいたのだ。これではいずれ自分たちが怪獣たちの餌食となるのを待つだけじゃないか。ならば他国からの助力を借りようと思ったのだが…アンリエッタのこの様子だと望んだ結果は残せなかったようだ。
「これで15回目ですぞ」
これでは自分までため息を漏らしたくなってしまう。王女は国民たちの象徴、だから他者のテンションを下げるようなそぶりを見せるようなことは控えなくてはならない。作り笑いだろうが、常に笑顔を見せることで国民たちを元気づけることも必要だった。自分の幸せなど、そっちのけにすることになっても…。
「もう止めましょう…マザリーニ」
そう言って首を横に振るアンリエッタは先ほどの沈んだ表情から一転して、嬉しそうな顔をして窓の外を眺めながら呟いた。
「今日は懐かしき友に会えるのですから。私の懐かしき心のお友達…」
魔法学院の歓迎式典はやはり盛大におこなわれた。
「トリステイン王国王女アンリエッタ様のおな〜り〜
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