魔石の時代
第一章
始まりの夜5
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この宝石を集めて一体どうしたいのか、と言うのを聞きたいんだが……」
もっとも、前途は多難だった。当然のように警戒されている。殺しかけたのだから、仕方がない。なるべく優しく――なのはに話しかけるような気分で問いかける。
「…………」
それで誤魔化せるほど安くはないらしい。ウチの妹より危機管理はしっかりしているようだ。……いや、むしろあの親子の危機管理がなっていないだけか。
「分かった。それじゃあ、まずはこれだけ答えてくれ。お前たちは、この世界の住民を犠牲にする、もしくは巻き込む気があるか?」
危機管理と言えば、まずこれだけは確認しておく必要がある。
「ありません」
幸い、彼女ははっきりとそう答えた。とはいえ、それは本当なのか。表情。目の動き。呼吸。長らく欲望に接し、殺し合いを続けてきた身だ。相手が嘘をついているかどうかは、何となく分かる。
「まぁ、いいだろう」
おそらく嘘ではない。少なくとも、積極的に誰かを巻き込む気はないだろう。そう判断する事にした。とはいえ、ジュエルシードが関わった場合に手段を選んでくれるかどうかは不安が残る。それに、殺戮衝動もある。彼女達はしばらく監視下に置いておきたい。
「取引をしよう」
俺が持ちかけた取引は簡単だった。取引と言うよりは提案に近い。
ジュエルシードを集めるのを手伝わせて欲しい。そう言った時の、彼女達の表情は見ものだったが……事は簡単には進まなかった。
さすがに、自分を殺しかけた相手と手を結ぶとなれば、躊躇うのは必然だろう。ここで俺を始末して、ジュエルシードを奪う。どうやら、それが彼女達の選択だったらしい。
それならそれで構いはいないが。
「さて。満足したか?」
夜明けまでにはまだまだ時間があるはずだが。何となく外を気にしながら、告げる。その先には、息を切らした二人の姿があった。
魔法の威力は申し分ない。才能もある。思い切りも良かった。だが、経験が圧倒的に不足している。……全ての記憶を取り戻したとは言い難い今の俺と比べても。もちろん、それは仕方がない事だ。相手が不老不死の怪物ではさすがに分が悪い。
とはいえ、彼女の才能であれば、そう遠くない未来に一流の魔導師になる。それが喜ばしい事かどうか。それは俺が判断すべき事でもないのだろうが。
「まいりました……」
もっとも、未来の栄光など、今の時点では何の役にも立たない。お陰で二人をあしらう事はそこまで困難ではなかった。結局、杖――いや、大鎌か――を頼りに何とか立ち上がりながら、その少女は言った。
「そうか。それなら、そろそろ素直に条件を飲んでもらえるかな?」
「……はい」
躊躇いがちに、頷く。取りあえず、まずは一歩前進という事だろう。
「それなら、これからよろしく頼む」
言いながら、身体の傷を癒してや
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