魔石の時代
第一章
始まりの夜5
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慣れているのが分かる。油断はできない相手だ。決して弱くはないはずの思念体を片手間に倒している。
「行こう。あの人がジュエルシードを回収する前に」
覚悟を決めて、身を潜めていた場所から踏み出す。
「すみませんが――」
ジュエルシードは、私が頂きます。その背中に告げるより早く、彼が動いた。
「逃げた!?」
黒衣の少年はわき目も振らず、建物の中を目指して一目散に走り出した。
「逃がしません!」
慌てて追いかける。だが、彼も魔法で強化しているのかなかなか追いつけない。それでも黒い背中を見据え、走り続ける。
「邪魔するんじゃないよ!」
ジュエルシードが生み出した幻影だろう。真っ黒でぼさぼさの髪を振り乱して襲ってきた、白い服の女の人をアルフが殴り飛ばした。その隙に突破する。いちいち幻影の相手などしていられない。それに、速さなら私達の方が上だ。
「見つけた!」
明かりのためだろうか。魔力を帯びた光がいくつも漂う訓練場に彼はいた。他にも何か奇妙な植物がいくつか点在していたが――これもおそらくジュエルシードが生み出したも
のだろう。そして、彼の手には原因であろうジュエルシードが握られていた。あるいは、彼の扱う見慣れぬ魔法は、ジュエルシードの暴走によるものなのかもしれない。
いずれにせよ、その少年が目的の物を持っているのは間違いない。彼には悪いが、私が回収させてもらう。
「悪いけど、それはアタシ達が頂いて行くよ!」
アルフと同時に、私も彼に接近する。彼は再び後ろに飛び退く。だが、もう逃がさない。魔力を練り、解放する。
≪Flash Move≫
その瞬間、自分の軽率さを痛感する羽目になる。防御こそどうにか間に合ったが、それだけだ。全くなす術も無かった。それまでただぼんやりと漂っていただけの光が一斉に私達に向かって飛んでくる。さらに、周囲の奇妙な植物が一斉に爆発した。いや――
(つめ、たい……?)
閃光に視界を塞がれているせいで分からないが、この爆発は熱を伴っていない。むしろ逆だ。周囲の空間ごと凍りついていくのを感じる。
(物理設定……?)
身体を捕える氷とは別の冷たさが背筋を駆け上がった。彼の魔法は、明らかに物理設定だ。防御が間に合っていなかったら、今頃氷漬けになって死んでいる。
(早く抜けださなきゃ!)
視界が戻った時、私達は巨大な氷の塊に飲み込まれていた。抜け出すべく、魔力を集中させる――より早く、首筋に別の冷たさを感じた。
「逃げたら追いかけたくなるという気分は分からないでもないが……。しかし、まさかこれほど上手く引っ掛かるとは思わなかったな」
私の首筋に魔力を宿した異形の剣が突きつけながら、黒衣の少年はむしろ呆れたように言った。どうやら、まんまと誘い込まれてしまったらしい。
「まぁ、いい。それ
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