暁 〜小説投稿サイト〜
その魂に祝福を
魔石の時代
第一章
始まりの夜5
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今回のジュエルシードは、そう言った連中の欲望を叶えたようだ。
 迷惑な話だ。連中とてまさか本当に体験したいと思っている訳ではないだろうに。苛立ち交じり――八つ当たりついでに毒づく。
(ピアノの他には何があった? 人体模型とトイレの亡霊は始末したが……)
 どうやら全て始末しなければ、ジュエルシードに行きつけそうにない。ジェミニを相手にするよりは楽だと自分に言い聞かせ、夜の校舎を彷徨う。
(体育館とプール。あとは、何とかいう石像だったか。それに、図書館の絵画と……他に何があった?)
 重苦しい音色を奏ながら、何故か襲いかかってくる――噂ではただ音楽を奏でるだけのはずだったが――グランドピアノを叩き斬りながら呻く。もっとも、言い伝えというのが往々にしてそうであるように、年月を重ねるごとに内容は変化したり、失伝する事もあるらしい。もちろん、全く別の話が組み込まれることもあるようだ。実際、七不思議と言いながらも、俺が知る限りその類の言い伝えは十話を超える。七体の魔物を仕留めれば済むのか、それとも伝わる限りの魔物を相手にしなければならないのか。
(言い伝え全てというのは勘弁して欲しいな。俺も全てを知っている訳じゃない)
 目を離した隙に向きが変わる――どころか、そのまま飛び出して襲いかかってきた女性の絵画を燃やしながら呻く。とりあえず、最も有名な七つを始末しよう。それで終われば儲けものだった。
(というか、さっきから散々備品を破壊しているが、救済すれば直るんだろうな?)
 走り回るだけでは飽き足らず、背負った薪に火を灯して投げつけてくる石像を神木の根で絡め取り粉砕しながら、ふとした不安にかられる。この石像一つでもそれなりの値段がするはずだった。……まぁ、魔法使いである以上、手段さえ問わなければ金銭を入手する手段などいくらでもあるが。とはいえ、今まで破壊してきたのはどれもかなり高額な代物だ。弁償と言う事態はできれば避けたい。
(何であれ、どうやら楽には行きそうにないな……)
 水面一面に生え手招きする――だけでは飽き足らず、実力行使で引きずり込もうとする腕どもをプールごと凍りつかせ、ため息をつく。全く、つくづくままならない。どうやら、異境の強化はまだ不充分だったらしい。
(あの樹のせいか? それとも、予めあの魔石がこの世界にあると知っていたのか? それとも全く別の何かが狙いか?)
 何が狙いは分からないが――ユーノとは異なる、新たな同業者達の気配を感じた。




「何だい、アイツは。さっきから妙な魔法を使ってるみたいだけど……」
 私の使い魔――アルフが、小さく呟く。
「分からない。でも、油断はできないよ」
 黒衣の少年――見慣れぬ魔法を使うその魔導師は、只者ではない。私よりいくらか年上のようだが、それを差し引いても妙に戦い
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