魔石の時代
第一章
始まりの夜5
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えるのか。
『なるほど。ここで簡単に頷くようなら、見込みはねえが……その様子なら、まんざら理解できてねえって訳でもねえようだな』
躊躇い、黙り込んでしまうと、むしろリブロムは満足そうに笑った。
『今回の事は、気にするな。相棒の落ち度でもあるんだからよ。ここが相棒の縄張りである以上、相棒が自分で気付いて対処すべきだったんだ』
「でも……」
私の言葉を遮って、言い聞かせるようにリブロムが言った。
『いいから。お前はしばらくは相棒を探す事に集中しな。そうすりゃ、いずれ目的も達成できるだろ』
それは、まるで光に言われたように、私には思えた。
3
永い眠りから覚め――気付けば、ここにいた。周りには何人もの子どもたちがいる。無邪気で眩いばかりの『夢』に包まれたその場所は、欲望に苛まれた自分には酷く心地よく感じられた。その心地よさに身をゆだねまどろむ中で――ふと声を聞いた。
「ねぇねぇ、知ってる。北校舎の――」
「あのさ。理科室にある人体模型って――」
ワクワクドキドキと高まる鼓動。ちょっとの恐怖と冒険心に満ちた瞳。どうやらこの子達は、この場所に伝わる伝説を語っているらしい。
「今度、忍びこんでみようか?」
ちょっとした大冒険――それがこの子達の願いなら、その願いを叶えましょう。
その魔石は少しだけ真面目すぎたのだろう。そして、きっと、子ども好きだったのだ。何より、こんな無邪気な『夢』に触れたのは随分と久しぶりだった。
……だから、つい張り切り過ぎてしまったのだ。
…――
街中に樹が生えた日の深夜――いや、すでに日付は超えているか。ともあれ、その夜、もう一つジュエルシードの気配を感じた。一度目はなのは。二度目は恭也たち。三度目はこの街が巻き込まれた。これ以上、出遅れる訳にはいかない。
(優先順位を間違えたな)
異境の強化――これからくるかもしれない脅威に対する守りを固める事にばかり力を注ぎすぎて、目の前の脅威を甘く見すぎていた。守りを固めるには限界がある。それよりも脅威を呼び寄せる元凶こそを真っ先に叩くべきだったのだ。
所詮聖杯ではないと甘く見たばかりに、優先順位を明らかに読み間違えた。そんな自分に対する苛立ちと殺気を宿しながら向かった先は――呆れた事に、通い慣れた学校だった。家を飛び出さなければ、あるいはもっと楽に見つけられていたのかもしれない。皮肉に、胃が捩れるのを感じた。
「次は……音楽室のピアノか?」
その夜、学び舎は魔物の巣窟と化していた。元々学校には、七不思議なる言い伝えがあるらしい。例えば、夜中に人体模型やら骨格模型やらが走り回るとか、トイレに女の亡霊が出るとか、そう言ったような。それらは各地の学校ごとに代々受け継がれ――時々は実際に体験しようとする物好きな連中もいるらしい。
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