魔石の時代
第一章
始まりの夜5
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いただろ。オマエが可愛い可愛い妹を唆したって事に。どっかで狙ってるかもなぁ』
「そ、唆したって……」
露骨にユーノが怯えだす。本当に光には怖い目にあわされたらしい。そんな事をする兄の姿と言うのは、なかなか想像できないのだけれど。
(光お兄ちゃん……)
もしも、本当に気付いているのなら、何で姿を見せてくれないのだろう。
(ひょっとして……)
私が足手まといだから、姿を見せてくれないのではないか。今日だって、本当なら――光なら、街がこんな風になる前にきっと止められていた。光の役に立ちたかったのに、私はこんなにも役立たずで……。
「なのは、なのは。泣かないで。君は何にも悪くないんだから」
知らない間に泣いてしまっていたらしい。折角我慢していたのに。こんなところで泣いている場合ではないのに。
『あ〜あ。ついに泣かせちまいやがった。これでお前を襲う惨劇の度合いがさらに高まったな。ユーノ、お前の事は忘れないぞ。……っていうか、あまりの惨劇に嫌でも忘れられなくなるだろうな。ヒャハハハハハ!』
「ひいいい!?――って、今はそれどころじゃなくて! リブロムさんも何か言ってあげてくださいよ!」
『あ、バカ。鞄の蓋開けて揺さぶるんじゃねえ! 落ちるだろうがああああ――っ!』
リブロムを入れるために用意したリュックサックのファスナーをユーノが全開にし、そのまま揺さぶると、しばらくしてリブロムが表表紙から地面に落ちた。
『テメエ……。この屈辱は忘れねえ。どっかのページに書きこんどくからな』
もぞもぞと起き上がってから、リブロムがユーノを睨みつける。けれど、今回はユーノも退かなかった。根負けしたように、リブロムがため息をつく。
『まぁ、詰めが甘かったのは事実だろうな。だが、お前の目的はこの街を守る事じゃなくて、相棒を探す事だ。なら、気にするようなことでもねえだろ』
「違うよ。そんなことない!」
反射的に言いかえしていた。確かに、光を探している。見つけて、一緒に帰りたい。けれど、その為に街がどうなってもいいなんて事は、絶対にない。
「光お兄ちゃんと一緒に帰るために、私は光お兄ちゃんを助けたいの。力になりたいの」
我がままだろうか。そうなのかもしれない。それでも――リブロムを真っ直ぐに見詰めて、告げる。
『魔法使いに必要な素質ってのを知っているか?』
突然、リブロムはそんな事を言った。私の返事を待たず、彼は続ける。
『強大な魔力か? 多彩な魔法か? いいや、違う。必要なのは覚悟だ。何を代償にしても、使命を成し遂げる。その覚悟こそが強大な力を生み出す。お前は一体何を望む? それを果たす覚悟はあるか?』
覚悟があるか?――今までになく真剣に、リブロムが言った。
ある……はずだった。けれど。本当に、それは彼の言うような覚悟と言
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