魔石の時代
第一章
始まりの夜5
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今あの選択をやり直せるとして。それでも、おそらく自分は同じ選択をするだろう。記憶も名前も力も身体すら失っても、結局自分は自分にしかなれないらしい。それなら、迷う事など何も無い。いや――もしもあの時、彼を『救済』していたならどうなっていたのか。迷うとすれば、あの時と同じその一点だけだ。
仮に彼を救済していたなら、世界は再び『奴ら』に蹂躙されていたのか。それとも、別の未来が広がっていたのか。今となってはもはや確かめる術などない事だが。
もっとも、仮に彼を救済したとして、あの『リブロム』を生贄とした時点で、真っ当な人間の魔法使いになる事はおおよそ絶望的だっただろう。あの絶望的な殺し合いの中で、不老不死の血を受け継いだリブロムの魂を取り込んだのだから。だからこそ、自分は『奴ら』に挑み、勝ち抜ける事が出来たのだ。
だから、どの道自分の運命が大きく変わる事はなかっただろう。おそらく自分はなるべくして不死の怪物となったのだ。それに後悔がある訳ではない。ただ、もしも――
『ところで相棒、気づいているんだろうな?』
リブロムの声に頷く。相棒が何を言わんとしているのか、そんな事は分かっていた。
『あのチビは魔力を秘めている。しかも、呆れるくらい強力なのをな』
その通りだ。在りし日の力を取り戻せていない今の自分など到底及ばない。自分の歩んできた永い年月の中でも、あれほどの力を秘めた魔法使いはそう多くはなかった。そして、その多くない魔法使い達は――その力ゆえに、苦難と戦いの道を歩む事となった。
だから、せめてあの子だけは。妹だけは魔法から遠ざけようと――守ろうと決めた。
自分達のような生き方をしないで済むように。
それが、暖かで鮮明な記憶を与えてくれた彼女たちへのせめてもの恩返しだろう。
2
甘く考えすぎていたのかもしれない。
後悔を噛みしめながら、壊れてしまった街を歩く。視界が滲むのが分かった。
(私の、私のせいだ……)
ちゃんと気づいていたのに。あの時、しっかりジュエルシードを探していれば、こんな事にはならなかったはずなのに。
なのに、私は光を探す事を優先してしまった。きっと傍にいると思った。何かあればすぐに助けてくれると思っていた。……光は、この広い街のどこかにあるジュエルシードを一人で探し回っているのに。この街を、たった一人で守ろうとしているのに。
光の力になりたいと思った。だから、私も魔法使いになった。それなのに……。
鼻の奥がツンと痛くなった。泣いている場合ではないと、自分に言い聞かせる。
「何か今、急に寒気が……」
『奇遇だな。オレもだ』
少しだけ滲んでしまった視界を誤魔化していると、肩のユーノと、鞄の中のリブロムが口々に呟くのが聞こえた。
『まぁ、あれだけ派手にやりゃあ、相棒も気付
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