魔石の時代
第一章
始まりの夜5
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記憶が混濁している。
それは、相棒――偽典『リブロム』を取り戻してからも感じていた事だ。自分自身についての記憶は特に顕著だった。どうやら自分が真っ当な人間ではない事はリブロムと再会する前から早々に思い知っていたが……どうやらそれどころではなかったらしい。
それにしても、我ながら随分と途方もない事に挑んだものだ。しかし、
『さて、それはどうかな?』
そんな夢物語が本当に達成できたのだろうか。自分の――■■■■■■■■■■■という存在の始まりの記憶を読み解き、真っ先に思い浮かんだのはそんな事だった。
『全てはオレの中に記憶されている。読み進めばすべて理解できるさ』
どうやら、それ以外に方法はなさそうだ。それに、自分が何者かなんて事はこの際どうでもよかった。そんな事より、記憶の欠片を取り戻すごとに強まる得体の知れない焦燥の正体こそ知りたい。その原因こそが重要だと、かつての自分が叫んでいる。
『おっと、そう慌てんなって。物事には順番ってもんがあるんだぜ?』
それはそうなのだろうが。しかし、この魔術書はなかなかに意地が悪い。書き手の顔が見てみたいと思う程度には。……もっとも、書いたのはかつての自分らしいのだが。
『大体、これでも大分省いて進めてるんだ。じゃねえと、マジで時間がいくらあっても足りねえからな』
つくづくその通りだ。あの夢物語が本当に達成できたかどうかはともかく――少なくとも、自分は不老不死の存在だったらしい。いや、素直に不老不死の怪物と言っていいか。
時に人知を超えた怪物と。時に欲望に塗れた武装集団と。時には異なる正義を掲げた同業者と。そんな化物どもと延々と戦い続けてきたのだから、他に言いようもあるまい。
ともあれ、その記憶量はあまりに膨大だった。要所要所を掻い摘む程度にしてもらわなければ、それこそ時間がどれだけあっても足りない。だが、残念ながら記憶だけ取り戻しただけでは意味がなさそうだ。
目的を果たすには、在りし日の力を取り戻す必要もある。それもまた、薄々と理解していた事だ。だからこそ、相棒もわざわざ段階を踏んで進めているのだろう。
それに、もっと単純な事実として、かつての自分にとっての『要所』を乗り越えるには相応の力がいる。それがなければ、その先には進めない。とはいえ、
『まぁ、そうかも知れねえな』
過ぎた力など持つものではない。かつての自分が辿ってきた道のりを……その僅かばかりの断片を客観的に俯瞰して、今さらながらにそんな事を思う。もちろん、あの時の自分に他に選択肢などなかったが……仮に自分が魔法使いにならなければ――せめてただの魔法使いだったなら、もう少し違った――もっと穏やかな生き方ができたのかもしれない。ある意味全てが終わった今となっては、そんな事を思う。
もっとも、仮に
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