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SAO編
むしろ生でいく
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れど俺たちがそんなスキルを身につけているわけなどあるはずがない訳で。S級のレアアイテムであるこれは、そりゃあ売っても十分すぎるほどに役に立つものであはるけれど、見つけた瞬間から食べる気でいた俺がそう簡単に諦められるはずもなく、オブジェクト化しようとした俺の腕をあわててキリトが掴む。

「放せキリト!俺は生でも食うぞ!いや、むしろ馬刺し的な感じで旨いかもしれない!」

「落ち着け!せめて声のボリューム落とせ!」

「俺はもう煮込みの口になってんだ!今日の夕飯はシチューと決めたんだ!!今!」

「煮込みの口ってなんだよ!てか今!?」

「がるるる……」

「なんだキリト!威嚇しても無駄だぞ!俺は……ん?」

 ふと感じた違和感に、背筋を嫌な汗が伝う。おそるおそる、引きつった顔のキリトと同時に辺りを見回す。木々の間から覗く爛々と光る赤の瞳が俺たちを見つめ返した。しかもその数はひとつではない。ぐるりと俺たちを囲むように並ぶその双眸に、逃げ場がないことを悟った。

「……キリト」

「……ああ」

 瞬時に状況を理解した俺たちは、かつてないほどの反射神経を発揮してそれぞれ緊急時の為にとっておいた転移結晶を握りしめて《アルゲード》の街の名前を叫ぶ。青の結晶は儚く砕け散り、鈴のような涼やかな音色が鼓膜を揺らしては目の前が青色の光に覆われていく。完全に視界が染められる前に、牙をむいた狼たちが茂みの間から飛び出していくのが見えた。


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