SAO編
むしろ生でいく
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をしながら十分ほど歩くと見えた出口に、自然と歩幅は大きくなる。明るいそこを通るとばっと広がる視界に、思わず目を細めた。
「はー……今日はいい天気だなぁ」
「もう夕暮れだけどな」
深呼吸をして、マイナスイオンを体中に浴びる俺にキリトが小声であげ足を取る。無言で俺は肩くらいの高さにあるその頭をぱしりと叩いて、眼前に広がる森に足を進めた。後ろから聞こえるキリトの非難の声に、べーと軽く舌を出す。
「いいんだよ。一日半ぶりのお天道様なんだから」
「一日半!?そんなに潜ってたのか……てかいちいち叩――っ」
聞こえた草笛の音色にも似た動物の鳴き声に、不自然に言葉を切ったキリトを横目で見る。ぱちりとあった視線で、音を出さずに頷いた。俺よりも熟練度が上であるキリトが《索敵スキル》を発動させると同時に俺は腰の愛刀に手を添える。するとキリトがほとんど音を立てず、そんな俺を制するように一歩前へ出た。
「見つけた。十メートル先の木の影《ラグー・ラビット》」
聞こえたレアモンスターの名前に息をのんで、発動させていた索敵スキルの意識をそこに集中させる。
「いた。俺が行く」
モンスターにしては大きくはないが、ウサギと呼ぶには二回りほどでかいその身体。言われた通り、その枝陰に隠れるようにひっそりといる灰緑色の体の上に表示された黄色いカーソルに自然と口角が上がった。その理由はいたって単純。それからドロップされる《ラグー・ラビットの肉》は超高額で取引されるほど美味だと有名なのだ。俺は腰の後ろに回していた手を前に回すと、投擲用のピックをひとつ取り出して投剣スキルの基本技である《シングルシュート》の構えを取った。モーションが検知され、瞬間に放たれたピックは寸分も違わず狙った先へ飛んでいく。決して低くないスキル錬度に、鍛えた敏捷性のステータス補正の与えるダメージは一ドットも残さずラグー・ラビットのHPを食らいつくした。
「よっしゃ!」
聞こえた断末魔の弱々しい鳴き声に、ポリゴンの飛散する音。思わず右手をぐっと握りしめてガッツポーズをとった。しかし肝心なアイテムが出ていなければ元も子もない。あわててシステムメニューを呼びだしてアイテム欄をひたすらスクロール。その一番下に見つけたお目当ての名前に、キリトと二人でハイタッチを交わした。
「やったなキリト!」
「にしても……どうする?」
「食うに決まってるだろ」
「いや、でも料理人は?」
「……いっそ生でも旨いんじゃないか?」
「早まるなポート!」
もっとも重要なことをキリトに指摘され、思考が止まる。高額で取引されるこの《ラグー・ラビットの肉》は高級な食材アイテムだ。つまりそれを料理する側の人間にもそれなりのスキル錬度が必要なわけで、け
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