トワノクウ
第三十夜 冬ざれ木立(三)
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中の翼を滅多刺しにしている。もちろんそれらも自動的に治癒し、刺さった羽毛は玉砂利に落ちる。
その間に梵天はくうの前まで歩いて来て、いつかのようにくうを俵担ぎにした。
「騒がせたね。これは持って帰っておく」
「是非お願いします」
くうは暴れた。真朱をこのままにして帰るなど、許せない。せめて薫が味わった灼熱の一部でもぶつけてやらねば気がすまないのに。
梵天の腕は細さに反して力強かった。
結局、くうは梵天に担がれたまま、坂守神社の敷地を出ざるをえなかった。
梵天がくうを連れて去ってから、菖蒲は長い溜息をついた。
くうが前触れもなく唐突に走り出した時には何かと思ったが、まさか真朱と戦っていたとは。
(そもそも真朱が戦巫女をやれるようになっていたことさえ知らなかった)
まだ不安を残して菖蒲を見上げる真朱は、菖蒲が知るよりずっと大人らしく、少女らしい姿をしている。かつて妹として可愛がったあの真朱はもういない。
『姫様!!』
決して少なくない数の巫女と、各地の祓い人、それに陰陽寮も。騒ぎを聞きつけて駆けつけたようだった。
何があったのか問われる。素直に梵天たちのことを話すわけにはいかない。
「鳥がいただけです。変わった種類の鳥が二羽、ね」
群衆の困惑の気配が強まっても、菖蒲は意に介さなかった。どうせ後で真朱がありのままを話せば伝わることだ。
さて、と菖蒲は陰陽衆の中から、黒鳶を見出す。
亡骸も遺品も遺さず逝った弟子の訃報。彼にどう伝えれば納得してもらえるだろうか。そちらのほうが頭の痛い仕事だった。
Continue…
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