第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
22.Jury・Night:『Howler in the Dark』T
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「そうだね〜、やっぱり『飼う』なら〜、ああいう可愛い子が良いよね〜」
影から恭しく礼を取った『彼』に、しかし紅い占い師は興味を抱かない。既に遊び飽きた玩具を、子供がそこらに放るように。ショウウィンドウに並ぶ新しい玩具に目を奪われるように、『男』を見詰める占い師は。
それに、『彼』はギシギシ、グチャグチャと『歯』を鳴らす。『彼』の女王の機嫌を損ねぬように、小さく小さく。さながら、濡らした紙ヤスリを擦り付けるように。
「あんなもの……あの程度の魔術使い、すぐに喰らい尽くせる。だが、我が女王にそこまで言われる男だ――――」
口調とは裏腹に、『彼』は怯えている。それは目の前の紅い占い師に対してか、彼方の『男』に対してか。『彼』の『本質』の部分が――――いずれかの前の『強者』に。
どんなに強がろうと、決して敵わない相手。しかし、認めたくないその事実に。
「死を望むまで、苦しめてやる……その『クルーシュチャ方程式』を、楽しませて貰うとも」
だから、『目的』をすり替える。自分より『弱い』相手へと。『危険な獲物』より、『遊び道具』へと。
ニタニタと、ネチャネチャと。不快極まりない粘着質さで――――
「あの小娘を目の前で喰っちまえば――――お前はどんなに苦しむかな、『闇を彷徨う者』!」
花束の如き少女が消えた寮を、舌舐めずりするように眺めて……闇に吠えた。
………………
…………
……
ゆらり、と。昼間、アスファルトに降り注いでいた太陽の熱が立ち上る陽炎に変わって、気温の下がった夜の空に帰っていく。
その為、今もまだ暑さに変わりはない。日が落ちても尚、今度は足元から熱が。
「…………」
少女達は、駅前の噴水広場で腰を下ろしている。金髪碧眼の高校生、フレンダは苛々と携帯を弄りながら。オレンジのフードを目深に被る中学生、最愛の『アイテム』二人組は――――今や、『駅前広場のチェシャ猫』として都市伝説になるくらいに目撃者を出した『黒豹男』との初遭遇場所で、その到着を待っていた。
「おっそいわねー。どこで油売ってる訳よ、あの黒猫」
フレンダがそう愚痴るのも仕方無い。時刻は既に、20時まで後5分を切っている。
暗部に於いて、最も重要な要素は『信頼』だ。他者を明日をも知れね我が身を預けるのは、信頼できる相手を於いて他にはない。
まぁ、それも結局、『自分が生き残るため』の利害の一致でしかない。寧ろそうでなければ、寝首を掛かれるのが暗部である。
「はぁ〜……だから嫌だって言ったのに。結局、時間にルーズとか麦野の『原子崩し』確定な訳よね、絹旗?」
携帯をミニスカのポ
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