第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
22.Jury・Night:『Howler in the Dark』T
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。虚空は、厳然と――――そこに在り続ける。
そこに。貴方が意味を見出だす全ての根幹に、遍く。どんなに理論で否定しても、遍く、必ず在るのだから。
「――――あぁ、疲れたなぁ」
背骨を伸ばす。ゴキリ、と背骨が鳴る。慣れたものだ、今更だ。
安寧の暗闇の中、懐をまさぐる。取りいだしたるは『断罪の書・断篇』、預かりしもの。それを、自分の宿舎まで読もうと。この、悪意に満ちた暗がりの中で。命知らずにも。
「成る程、つまり『ヨグ=ソトース』は一定の条件下のみ召喚に応じるのか……」
その、複雑怪奇な召喚条件を鑑みて。彼は、頭を抱える。『門の神』、否、『門の鍵』たる神の召喚条件の厳しさに。
要するに、義父の助けが必要なのだ、この邪神の召喚には――――卓越した、その技法、『ハテグ・クラの山頂で刀を打つかの如く。
「……参ったね、ここまでとは」
だから、苦笑を混ぜて。だから、刀を片手に。いまだ、紙片なれども。いまだ、詩編なれども。
だが他には、得る事など出来まい。あの師父が認めたのだ。この力を……得なければ。
『――――駄目。駄目よ、こうじ』
「え――――」
刹那、声がした。ソプラノの声、囁くように耳許で。顔を上げる。いつの間にか惹き付けられるように読み耽っていた『断罪の書・断篇』から。
しかし、周りには誰も居ない。そう、誰も。人気の一つも、命の気配一つも。
『早く、気付いてあげて。泣いてるわ、怖いって……さっきから』
その、一瞬。見えたのは、右目の視界の端。見ようとした動きの間に、消えてしまう。
だが、確かに。幽かに、黄金が。薄紅色の虹瞳が、泣き出しそうに潤んでいて。
『泣いてる。泣いてる。君を呼んでだよ、コウジ。怖いって、苦しいってさ』
続いて、純銀が。やはり、右目の視界の端。見ようとした動きの間に、消えてしまう。
だが、確かに。幽かに、純銀が。薄蒼色の虹瞳、泣き出しそうに潤んでいて。
「ッ――――!」
――気付いた。気付かされた。ああ、そうだ。この空気……この『闇』。濃密なコールタールのような、纏わり付いて窒息してしまいそうな、この。
この気配には……覚えがある。一度目は風、二度目は雨。そして――――今度は、闇の結界か!
気付き、『魔術使い』の顔を見せる。気付いたのだ、気配、後ろから。饐えた悪臭を引き連れて、闇の中から――――此方を凝視する、『ソレ』に。
「――――チッ」
学ランの内側に手を伸ばす。触れた金属の質感はガバメント、恐怖に対する精神衛生。頼りないにも程がある、蜘蛛の糸。
それを握り締め、今にも飛び掛かってきそうな闇を睨み付けて――――
「____________!」
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