第7話 雅礼二とかいう男
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が電話を鳴らしていると、中に居た若い男が部屋から出てきた。紅芋のような色をした髪で、髪がチョンチョンと尖っており、優男な面構えをしている。
「芸術には、物語が必要なんだ。そしてそれは、悲劇であればあるほど良い。悲劇性、それは私達の心を引き付け……」
「あ、もしもし、南十字署でしょうか」
「その悲劇の中で生きるいたいけな命に私達は心を打たれるんだ。それは私達が、その悲劇に共感できるからに他ならない。私達も皆、それぞれの悲劇を生きているからなんだ。そうやって私達は……」
「はい、はい。恐らく拉致監禁、誘拐の可能性もあります、はい、はい。大至急お願いします。」
「分かるかい?人が自由を渇望する理由が。それはね、人は皆、生まれながらにして囚われてるからなんだ、地縁、血縁、しがらみ……」
「はい、場所は南十字……」
「ってお前ェ!?警察ゥ!?まさか警察呼んでるのかぁ!?頼む!頼むそれだけは!」
グダグダと講釈を垂れていた男はようやく、状況に気づいて焦り、唐突に土下座し頭を地面に擦り付けて懇願し始めた。
「権城英忠、よく来たな。何、私達は怪しい事をしている訳ではない。中のアレも、芸術の追求の、一つの形だ。」
部屋の中から騒ぎを聞きつけて出てきたのは、形代だった。その隣には、先ほど籠の中で囚われていた少女も居る。こうして出てくる辺り、監禁という訳でもなさそうだ。
怪しいかどうかと言われればメチャクチャに怪しいし、若い男がここまで警察を呼ぶなと懇願するのなんて、やっぱり法に触れるような事をしてるんではないのかと思えたりするが。
「は、はぁ……」
とりあえずその場は、権城はスマホをしまった。
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「改めて、美術部3年の雅礼二だ。よろしく、権城君。」
「は、はぁ。よろしくお願いします。」
権城は美術部の中に通された。
ソファがあり、絵描き道具があり、テーブルがあり、そして籠がある。少女はまた籠の中に戻って、退屈そうに足をパタパタさせていた。
やたらと薄暗い部屋である。
やたらと怪しい。
「あ、あの。活動ってどんな?」
「あぁ、絵を描いてるよ。書きたいものを、書きたいように、ね。」
「で、こういう変態性癖を形にしてしまったと」
権城は籠の中の少女を目をやって言った。
描きかけの絵は、この少女の絵のようである。
籠に鎖。なんだろう、強烈な支配欲を感じる。
「違う。それは違う。先ほども言ったように、描くものに悲劇性が欲しいからこのような形をとっているだけの話なんだ。決して、可憐な少女を鎖につないで、自分の物だと絵を描く時だけでも思いたいとか、そういうことじゃない。」
(うわぁ説得力ねぇ)
礼二に対しては引きつつ、権城は形代に話を振った。
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