第四話
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、そのさらに奥から何か聞こえてくる。
「ふざっけんなよ!こっから出せ!はやく出せよ!」という怒号。
「嘘だ!そんなの嘘に決まってる!なあ!嘘なんだろ!?」という懇願。
「い、嫌ぁぁぁぁぁ!!帰してよぉぉぉぉぉ!!」という奇声。
なんでみんなあんなに叫んでいるのだろう。なんで俺はこんなところを走っているのだろう。俺の頭は、そんな単純な疑問でいっぱいになりつつあった。
不安も恐怖も、疲労感さえも感じないまま、ようやくシーラが足を止めると、半ば同気して俺の足も止まった。
「ねえ、ユウ。次の村に行こう」
シーラが俺の目を見つめ、手を取った。
「あの村に行く道だったら危険なポイントも少ないし、今は人も広場に集まってるから混んでもないし、行くなら今のうちだと思うんだ。……ユウ、来るよね?」
最後の一言を口にした時、その瞳がわずかに揺れた。
俺はその目を、いや、全体を見つめ返した。
一緒に狩りをしていた時とは何かが違う気がする。
なんだろうと考えながら、少しずつ視線を上に持っていくと……わかった。顔が違う。
変なアイテムを出した時だ。その時にシーラの、俺の姿が変わったんだ。現実のものに。
徐々に脳へ電気信号が送られ始める。
それで周りのやつらも変わってて、確か、やたら太ってるやつが多かったな。
シナプスに光が通る。
そう、それででっかいローブが出てきて……声が聞こえたんだ。それが、確か……
そこで俺の意識は完全に再起動した。
「茅場晶彦!!」
叫んだ瞬間、俺の心のごちゃごちゃした何かは、すべて憎しみに溺れた。
あいつが!あいつが奪った!俺の時間も身体も命も!
そう考えるだけで、あとは何もいらなかった。
「シーラ!!」
「ひゃ、ひゃいっ!」
シーラの肩が思いっきり跳ねる。
「次の村って言ったな、どこだ!」
「ひゃ、へ?あ、え、えーと、ここを出て北西に二十分くらい歩けば――」
「北西だな!」
俺はシーラの説明をほっぽると、彼女がここまで誘導したのかまさに目と鼻の先にそびえ立つ、この街とフィールドを、《圏内》と《圏外》とを隔てる、巨大な門へと走り出した。
「ちょ、ちょっと!危ないとこもあるんだってばぁ!」
この時点で気づかなければならなかったのだ。シーラの本心、そして何より自分の本心に。だが、この時の俺は、『思考』ということができなくなってしまっていた。
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