第四話
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きていないのだ。
『……では、最後に、諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれ給え』
その一言で、どこかへ飛んでいた俺の意識が戻ってきた。首を曲げると、すでにシーラが必死な様子でウインドウを操作している。
つられるように俺もメニューウインドウを呼び出し、アイテム欄を開いた。
一瞥すると、一番上に見なれぬアイテム名が書かれていた。すぐにそれを選択し、現れたオプションメニューから《実体化》を押す。瞬く間に、眼前へ、アイテム名《手鏡》が出現した。
実体化した直後で宙に浮くそれを、慎重に手に取り、眺めまわす。何の変哲もない、ただの手鏡のようだった。映っているのも間違いなく俺、『ユウ』の顔。
ぼんやりとした意識の中、ただただ不思議で鏡の中の自分を見つめていると、不意に、視界の隅が白く発光した。
何だと思い、自分の身体を見やる。なんと、身体が白い光に覆われていた。いくらか前の《強制転移》をぽつりと思い出すが、どうやらその光とは少し色が違うようだった。だが、類似はしているようで、その光は一瞬のうちに視界を埋めると、また同じように一瞬にして消えた。
……改めてあたりを見回してみるが、風景は変わっていない。やはり《転移》をさせるための光ではなかったようだ。
無感動にそれを認識すると、目のやり場を捜し、再び鏡に落ち着いた。
違和感。眼を鏡に戻した瞬間、なにやら変な感覚に陥った。自分が自分でないような、そんな感覚。
原因はなんだ。鏡?さっきの光?それとも――
「あ、あの……もしかして……ユウ……?」
ばっと、声のした方へ振り返る。右隣、俺より少しだけ小柄な、黒茶のポニーテールを揺らした見知らぬ女の子が、胸のところで手を組み、こちらを見上げていた。
その少女の問いには答えず、俺は三度、あたりを見回した。
皆、明らかに《手鏡》を使う前とは違う容姿をしている。縦幅は減り、横幅は増え、中には男女逆転している者もいる。
なるほど、と思った。
「え、えっと、ユウだよね?あたしだよ?シーラ」
聞こえていないと思ったのか、耳元まで来てそう言うシーラに、「そうだな」と呟き、俺は、再びしゃべりだしそうなローブへと、視線を向けた。
『……以上で《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の――健闘を祈る』
低い声はそれだけ言うと、現れた時と同じように、そのローブを赤い得体のしれない何かに変え、空に浮かぶひし形に吸い込まれるようにし、消えていった。
頭が真っ白だ。自分が今何をしているのかもわからない。
気がついた時、俺はシーラに手を引かれ、なにやら見覚えのある路地を走っていた。
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