第四話
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けばわめくほど人のパニックを誘発するだけだというのに、冷静になることもできないのか。
そんなイライラに頭を掻いていると、不意に隣で鈴の電子音が聞こえた。シーラがウインドウを出したのだ。
しばらくして、食い入るようにウインドウを見つめていたシーラが、揺れる声を発した。
「ねえ、ユウ。あんたのとこにログアウトのボタンって、あった?」
「……なかった」
諦めて呟いた、その瞬間、
「あっ……みんな上を見ろ!」
何者かの叫びに、俺は反射的に上を見上げた。
赤い、紅ともいえるみごとな夕焼け空。その中に一つ、やたらと目立つ異物を見つけた。
紅よりもさらに深い、まるで血のような赤黒さで光る、ウインドウにも似たひし形。その中心に何やらアルファベットのような文字が並んでいる。
アルファベットがこの状況の理由を知っていると、瞬時に確信した俺は、すぐさまその正体へ目を凝らし、目線をフォーカスした。
が、その焦点はすぐにばらけた。
突然、そのひし形が、爆発的に空全体へ広がった。と思う間もなく、その隙間から、粘性のある赤色の『何か』が滲み出てくる。そのまま地上に落下するかと思われたその『何か』は、予想に反し、地上とひし形の中間、空中でまとまり、突如その形を変えた。
俺の慣れ親しんだ、魔法使いが身に纏うようなフード付きの赤いローブだった。
「なん……だよアレ……」
どこかで誰かが呟いた。まさに皆の気持ちの代弁だ。恐らくこの光景を見ている全員がそう思っている。
このローブには、
「中身……ないけど……」
何も収まっていなかった。
「GMのローブだよ、あれ」
どこか遠くでシーラの声が鳴った時、
『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』
ローブの中から男の声が響いた。
それからのことは、あまりよく覚えていない。
声の主の名は、「茅場晶彦」といった。
シーラによると、このSAO、そしてナーヴギアを開発した人間の一人だそうだ。
その声は、俺たちプレイヤー全員に、ある宣言をした。
君たちはこの世界から自発的にログアウトすることができない。この世界から抜け出したければ、このゲームをクリアしろ、と。
そしてこのゲームでは一瞬でもエイチピーバーをゼロにしてはいけない。もしゼロになればその瞬間、ナーヴギアが脳を破壊し、生命活動を停止させる。
さらに、外部からのナーヴギアの解除、破壊が試みられた場合も、やはりナーヴギアが俺たちを殺すこと。それによってすでに二百十三人のプレイヤー息絶えていることを、茅場は付け足した。
そのことを茅場が語っている間、地上からの音は一切なかったように思える。きっと皆が皆、その言葉を理解で
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