第四話
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一旦戻るか。
そう呟きながら赤みを含んだ鋼鉄色の空を眺めていると、ふと、今まで気にもしていなかった右端に浮かぶ数字、時計に目が合った。
『17:26』
いつの間にこんなにも時間が経ってしまったのだろう。おおよそ四時間半ぶっ続けでゲームしていたとは……間違いなく新記録だ。ではない、そろそろログアウトしなければ。夕食の時間に遅れてしまう。
家の約束事で少しでも遅れれば祖父に長時間の説教をくらってしまうため、いつもなら五分前には席につき、その時間も身にまで染みているつもりだったが、迂闊だった。
「あー、悪い。俺、今日はもう終わるわ」
「え、もう?」
ウインドウに目を落としていたシーラが、勢いよく顔を上げ、目を見開いた。
そんなに驚くことなのかと若干動揺してしまった俺は、紛らわすため、入れ替わりにウインドウを呼び出し、目を落とす。
「お、おう。もうすぐ夕飯の時間だからな、色々うるさいんだよ、俺ん家。夜中はさすがにインできねーし」
肩をすくめつつ、《ログアウト》の文字を探し、どんどんウインドウをスクロールしていく。ちょうど全体の半分ほどまで捜査が達したころ、なにやら苦い顔で自分のウインドウを見つめていたシーラが、それを消去し、再び俺を見た。
「そ……うなんだ。じゃあ明日は?何時からくる?」
「……午後の四時くらいだな、一時間くらいしかだけど」
「四時……だね……うん、わかった」
シーラの声色がやたら弱々しかったのが気になったが、またからかうつもりなのだろうと思い直し、俺はあくまで平静を保つ。
残念なことに、それによりシーラがやられた顔を作ることはなかったが、口ぶりからして明日もこんなやり取りができるだろうと期待することにし、俺は、「じゃ、そろそろ」とシーラに手を振った。
シーラがおずおずと手を振りかえしてくれたことを確認すると、俺は再びウインドウに目を戻し、メニュータブを下へ下へと移動していった。
様々なタブが流れていく中、スクロールバーが一番下まで到達したらしく、唐突にそれが止まる。
と同時に、俺はあることに気づいた。
「なあ、ログアウトボタンって――」
直後だった。
リンゴーン、リンゴーンという、警告音とも取れるような鐘の轟音が俺たちの耳を突き刺した。たまらず二人の体がビクリとはねる。
「な、なんだ!?なんかのイベントか!?」
音の発信源を特定しようとあたりを見回してみるが、そのあまりの大音量のせいでままならない。
シーラなら何か知っているんじゃないかと目を向けるが、この轟音は彼女にとっても初体験の代物であるらしく、明らかな不安に顔を歪め、叫んだ。
「わかんないよ!こんなのベータの時にも……ッ!」
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