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ソードアート・オンライン 少年と贖罪の剣
第一話:贖罪の剣
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は、所々に斜線が引かれていた。
それは、この世界で死んでいった人のことを指している。
普通のゲームならば、その中で死んだとしても『死に戻り』するだけだが、このソードアート・オンラインは違う。
プレイヤー達に証明できる術はないが、このゲームで死を迎えた人間は、現実の世界でも頭に装着したゲーム機本体に脳を焼き切られて死ぬのだと言う。
故に、ゲーム世界の死=現実世界の死に繋がっている。

「……」

レンは、その中で一人の人間の名を見つけて、石碑に薄れた右手を触れた。浮かび上がる文字列を、目を細めて見る。

『プレイヤーネーム:ネロ
死亡年月:2024年8月
死亡原因:プレイヤーキル』

斜線の引かれたNeroの名に触れて、目を閉じる。次に開かれた彼の瞳は、右目が青白く染まっていた。

「もう、時間がないな…急がなければ…」

自らに起きた異常を認識して、再度強く目を閉じる。再び開かれた瞳は、紅蓮の双眸に戻っていた。

「また来る…」

そう呟いて、レンは生命の碑を後にした。



† †



生命の碑を後にしたレンが訪れたのは、現在の最前線である73層から遥かに下層である48層、その主街区であるリンダースだった。
夕方の少し涼しい風がレンの黒髪を揺らす。赤く染まった街を見て、レンは深く息を吐いた。

「よし、行くか!」

先ほどまでの達観した面持ちから一変して、彼は年相応の少年のような表情を浮かべていた。声も暗く沈んだものではなく、明るく溌剌としたものに。纏う雰囲気すら快活になった。

目的の場所はすぐに見つかった。大きな水車付きの職人クラス用のプレイヤーホーム。その扉にかかる『OPEN』の掛札を確認して、レンは思い切り扉を開いた。
しかしそれは、どうやらマズかったらしい。開いた途端にガツン! という痛々しい音を聞いて、レンの額に大粒の汗が流れた。

「………」

目尻に涙を溜めて半目で睨んでくるピンク色の髪の少女に、レンはどうしていいか分からず苦笑いを浮かべた。

「わりぃ」
「『わりぃ』じゃないわよ、このバカーー!」

叫びと共に左足のしっかりとした踏み込み、体の捻りを最大限に活かした少女の鉄拳が、レンを襲った。
が、その拳はレンに叩き込まれることなく、犯罪防止コードによる不可視の壁に防がれてしまう。

「わ、悪かったって!まさか扉の前にリズベットがいるとは思わなかったんだ!」

それでも尚、殴るのを止めようとしない少女ーーリズベットを必死に宥めるレン。
他のお客がいなくてよかった、と後にリズベットは安心することになる光景であった。



† †



「……で、今までどこほっつき歩いていたのよ?」

あれからしばらくして、
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