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王道を走れば:幻想にて
第三章、その4の3:サバイバル、オンボート
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抜けるよりも前に、水門が閉ざされてしまうであろう。
 チェスターが歯噛みしてその光景を見やっていると、憲兵の列の最後尾から、不自然な赤い飛沫が上がった。

「あれは・・・!」

 水門の上に走り出す悲鳴と飛沫にアダンは目を凝らす。そしてその騒ぎの中心に立つ者に見覚えを感じた。今一振りの剣閃で憲兵の胴を薙ぎ払ったのは、いつぞやビーラが魔術で洗脳した哀れな憲兵の男であったのだ。

「き、貴様っ、一体何を!!!」
「裏切りだっ!!こいつは内通ーーー」

 叫びかけた憲兵の胸部を、赤黒い瞳をした男が切伏せた。無機質な反応のままに血潮を顔に浴びて、その残虐な鉄の刃を生き残った男達に向けて走らせる。
 ボートを進ませる二人は顔を見合わせ、快活な笑みを浮かべた。

「ビーラの置き土産ってか!!最高!!」
「ああ、最高に素晴らしいな!!ふははははっ!!」
「ハハハハハハッ!!」
『ふははははははっ!!』

 三段の笑いを空に響かせていると、洗脳を受けた男が薙いだ兜を被った憲兵の頸が床を転がり、水門の縁から水面へと落ちていった。虚ろな瞳をした頸はくるくると回りながら、丁度水門に差し掛かったボートへ落ちていき、高々と笑うチェスターの頭頂部に激突した。

「ぶごぉっっ!!」

 兜の鶏冠(とさか)のような突っ張りが骨にがつんと当たり、目から星を散らしてチェスターは昏倒する。アダンが片手で上手く彼を支え、床に下ろした。

「ほ、本当あんた締まらないなぁ・・・」

 水門を抜けていくと杖の火噴きは大分治まり、船の揺れも治まっていく。惰性のままに水を掻き分ける船の行く先には、黄金色に揺れる麦畑の世界と、其処に被さる広々とした爽快な青空が存在していた。
 水門の上にて一人の憲兵が、腹から夥しき血潮を零し、腸を引き摺りながら這っている。

「く・・・そめ・・・逃して・・・な、るーーー」

 その首筋に一本の剣が突き刺さり、憲兵の息の根を止めた。剣を引き抜きながら男はとろとろと呟く。

「始末終了・・・任務を続ける・・・」

 そう踵を返す男の背には幾本の剣筋の痕が走っている。だが憲兵達の必死の抵抗に関わらず、男は常と変わらぬ様子のままであった。水門に転がる死体が血潮の池と作り、眼下の水路に良く似た、明るい太陽をその水面に浮かべた。それは水路の神聖な煌びやかさとは打って変わり、澱み荒んだ黒色に染まった太陽であった。





 鳥達の甲高い呟きが茜色の空に溶け込んでいる。薄らと掛かる雲の下、王都の一角に立ち込めていた噴煙もかなり治まった様子であり、騒動自体も沈静の一途を辿っていた。 
 その王都の内壁の内側、聖鐘の近くにある薬屋、『薬瓶ジョニー』の前に二人の若々しい男が座っていた。

「それで、一体どうな
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