第三章、その4の3:サバイバル、オンボート
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もの兵達が見受けられたのだ。
兵等の幾人は想像通り弓矢を持っているようであったが、他の幾人は錫杖のようなものを持っているようであった。チェスターが叫ぶ。
「頭を伏せろぉっっ!!」
水面を爆走するボートに向かって弓矢が吹き荒れ、そして振り抜いた錫杖から火球が放たれて襲い掛かり、二人の空を剣呑な色に染め上げた。アダンが腕と胸を盛り上げて、暴れ馬に等しき杖の向きを変える。
「ふんのぉぉおおおおっ!!!」
右に小さな軌跡を描いてボートが進み、降り立つ矢雨を回避していく。幾本のみが船のあらぬ場所に突き刺さるばかりで、人体にも船体の急所には当たっていない。而して火球は違った。幾つかは水面に着地して強烈な勢いを伴う水蒸気を撒き散らし、そして幾つかは水面に辿り着く前に爆発した。術式の構築が脆かった証左であるが、その勢いは水面に落ちたものよりも激しい。小さな星が破裂するかのような煌きが水面で生まれ、そして遂にその一つが船尾の近くで弾けて船をぐらぐらと揺らした。
水門を通り抜けて、ボートは元の軌跡へと戻っていく。アダンは左手に伝わる振動に違和感を感じて振り返る。宝玉から放つ火が爆発のそれから、放屁のような形と変じていた。
「おいっ!!一個すかしっ屁になってるぞっ!!」
「うん?・・・おお本当だ。魔力の充填は上手くいっていた筈・・・成程、衝撃の強さに術式が破壊されかかっているのか。いやぁ大変だなっ、ハハハ!!」
「・・・破壊されたらどうなんだ?」
「爆発する」
「爆発ぅっ!?」
アダンが声高く叫ぶと共に杖の宝玉に一筋の皹が入り、其処から火が波のように漏れ出して、ごぉんという轟音を響かせて勢い盛んに爆発した。
杖が半ばより吹き飛び、隣の宝玉が爆風を受けて揺れ、何ゆえか更に強い火を噴出し始めた。暴れ馬が暴れ熊となった瞬間であった。杖の震動がより激しくなる。
「あばばばばばばばばばっ!!!」
「ふ、踏ん張りたまえ!!舵を放すなっっ!!此処で離したら死ぬぞっ!!溺れる針鼠になる!!」
「誰のせいだと思っているんだ、この鼻糞野郎っ!!!」
目を怒らせてアダンが叫び、両手で必死に杖を制御する。推進剤を一つ破壊されてかボートの進みは緩くなっているのだがその走りは荒くなってしまい、船の跳ねるような動きによって、被る波は一気に増えてしまう。チェスターが備付けの桶で必死に水を汲み取り船外へと捨てていく。
数分の格闘の末にボートは、外延部のみすぼらしき街並みを横目に、外壁の水門へと到達する。だがアダンは驚きに声を漏らした。
「!!おいおいおいおいっ、水門が閉まっちまうぞっ!!」
水門の上に登っているのは明らかなる王国の憲兵達だ。水門を閉ざす鎖に駆け足で向かっているようである。このままではボートが水門を通り
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