暁 〜小説投稿サイト〜
【短編集】現実だってファンタジー
俺馴? 外伝2-2 [R-15?]
[6/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
違っているのか。間違っているとはなんなのか。入り乱れてマーブル模様のように形状が崩れていく中で、うねる渦の中心にずっとあいつがいるんだ。

確定した事実が不確定に変貌する最中で、逆に不確定だったあいつの顔ばかりが頭を過る。

いりこ。

俺の隣人。

俺を求める女。

不確定が確定した存在。

俺の知っているようで、全く理解の追い付いていなかった不可思議の存在が、急速に俺の心の中で存在感を増してゆく。始まりの戸惑いもあいつだったことを考えれば、これは当然の帰結だろう。全てが理解の外に追い出された思考の中で、あれだけが普遍的に不明だった。

俺を絶対的に信頼するいりこ。
淫らな貌を見せるいりこ。
俺を求めるいりこ。
不可解ないりこ。
甘えるいりこ。
優しいいりこ。
いりこ。
いりこ。
いりこ。

違う。俺の世界にはもっと他に考えるべき人が沢山いて、あいつは心の中心を支配するものではなかった。干渉は何度もされたが、俺の中心には俺が居た筈なのだ。気味の悪いあいつを拒絶すれば、あいつが離れれば俺はもう干渉を受けずに自己を自己として保っていられる。かき乱しているのはあいつだ。

そうだ、全てあいつが仕組んだことなんじゃないのか。考えれば俺は前から口でどうこう言いながらあいつの事を気にはしていたんだ。この異常として認知されているかも定かではない世界の中でもそれだけが変わっていない。あいつが何を考えているのか分からない。何もかも変わっているのに――でも、あいつは本当に変わってないのだろうか。

変わっているかいないか。手がかりは記憶しかない。でも、記憶が曖昧だ。曖昧なのは事故とやらの所為だろうか。そもそも事故とは実在したのか。していなければ薬の記憶がある筈が無い――待て、あの薬を用意したのはいりこだ。不確定だ。不確定の薬、あれは何の薬だ?薬を用意したいりこの好意は真実か、偽りか。わからない。

俺は表面的ないりこは知っていても、深層的にどのような意識を持った存在なのかはまだ知らないのではないのか。ならばいりこも変わっているのか。分からない。堂々巡りは20も30も繰り返され、最早考える事すら億劫だ。思い出すことも出来なくなってきた。

あいつが何かした。あいつが何をした?何も分からないのに何かしたのか。分からない。分からないことが分からない。頭がおかしくなりそうだ。俺の気が狂っているのか、だからいりこが助けているのか。
それとも おれは いりこ に きを く る わ  さ   れ    て     ?

いりこの心配そうな顔が、右に立った。
いりこの恍惚とした顔が、左に立った。
壊れているのは右か、左か。それとも、見ている俺が。

考えるのが嫌になって、自分の頭をビルの壁に叩きつけた。ごりっ、とコ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ