俺馴? 外伝2-2 [R-15?]
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欲望にばかり気を取られた馬鹿な女だと。
さざめくんの異変にも気づかず呑気にしていて、そんな察しの悪い人間はさざめくんには必要ないのに。求められないのに。求められない。必要とされてない。どうでもいい。存在してもしなくても構わない。存在する意味が無い。さざめくんに捨てられる塵芥のような存在に、私だけはならないと決めたのに。
でもそんな私をさざめくんは――
『お前がそばにいればそれで大丈夫だ』
『いいから大人しく面倒みられろ』
――価値を見出してくれるんだ。優しいから。そう、だから私はその優しさの全部が欲しい。得体の知れないと分かっている私を疑ったのに、疑いながらも私を認め、魅力を感じてくれた貴方だからこそ――欲しいの。欲しいからこそ、貴方の与えてくれる全てが愛おしい。
傷口にさざめくんの指が触れる感触が愛おしい。
刺激される神経の痛みが愛おしい。
念入りに塗り込まれるたびに指が動かされる、その事実さえも。
私の唾液がさざめくんの指に振れている事も。
さざめくんに私の口の中を見せていることでさえも、歓喜が溢れ出る。
さざめくんに支配されているようなこの一瞬に、みっともなく興奮してしまう。
でもそんなみっともない私の事も、さざめくんは――
――ねえ、そうでしょ?さざめくん。
= =
怖い。何一つとして理解の追い付かないこの世界が。
吐き気のする頭を抱えながら、町を歩く。
「……なんなんだよ。ちくしょう、なんなんだよ……!」
いりこに言い訳して、一人で帰路についた。あの後、いりこはまるでそれまで何事も無かったように普段のような振る舞いで俺と一緒に教室に戻った。誰も、何も疑問に思わない。たった一日がこれほどまでに長く感じられるなんて。まるで地獄だ。きっとこれは悪い夢なんだ。夢ならば須らくいつかは醒める筈なのに、どうしてここは気味が悪いほど日常をも感じさせる。
いっそこの町が見知らぬ街であればいいとさえ思った。だが何処をどう回っても、この町は寸分の狂いもなく俺の知る町だった。さびれかけの商店街。雑草だらけの空き地。賑わうスーパー。誰もいないバス停。邪魔な電柱。烏の鳴き声。
どうして町はこんなにも変わらないのに――俺の経験と脳の経験が何度も何度もブレるんだ。
「おや、いつもの子はどうしたんだい?」
「喧嘩でもしたのか?止めなさいよ変な意地を張るのは」
「謝ったほうがいいぞ、にーちゃん!」
「ふられたんだー!やーい!」
こいつらが俺の知る住民なのか、違うのか。
俺がそうなのか、違うのか。
共通意識からはじき出されたような感覚。
あやふやな認識が激しくかきまぜられていく。悩んでいる自分が正しいのか間
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