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ソードアート・オンライン リング・オブ・ハート
15:"ソレ"
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女を引き止めないことだ。

「おいっ、いいのか!? せっかくの取調べなのに、あれはきっと持ち物を隠してる! 見られたくないものが隠されてしまうぞ!?」

 俺は二階を指差しながら、三人に向かって言及する。
 だが……

「それはキリト君のせいだよっ!」
「あんた何てこと言ってくれてんのよーっ!」
「キリトさんっ、見損ないました!」

「うおおっ!?」

 三人から一斉に罵倒の声が叩きつけられた。
 一様に顔赤くカンカンに怒っており、俺を責め立てる気満々である。

「い……意味が分からないぞ? 一体どうしたっていうんだよ、俺が何かしたのかっ?」

「うふっ……ふ、ふふっ。あっ、あのね、キリト君っ……」

 その中で唯一怒ることなく、何故か此方に背を向けて爆笑を堪えている風のマーブルが、指先で涙を拭いながら答えてくれた。

「おっ……女の子にはね、くふふっ……『男性には絶対に見られたくない物』っているのが、ひっ……一つはあるものなのよ……」

「はぁ……見られたくないもの、ですか……? なんなんですか、ソレ?」

 それを問うた瞬間、マーブルは我慢できずにプッと噴出した。体を前のめりに曲げ、腹部を両手で押さえている。

「も、もうダメっ、おっかしい〜っ……!」

 体を小刻みに震わせ爆笑するマーブルさんを他所に、とうとう俺の脳内は混乱を極めた。

「一体何なんだっ、俺だけ話に置いてけぼりで……おいっ、アスナ達でもいいから『ソレ』が何なのか教えてくれよ!?」

「「「〜〜〜〜っ!?」」」

 それを聞いた三人は顔を更に赤くさせ、何故か一糸乱れぬ揃った動作で手を振り上げ……

「「「サイッテー!!」」」

 直後、俺の左右の頬にアスナとシリカの張り手が、顔のど真ん中にリズベットのパンチが炸裂した。

 ――ワケが……分か、らん……。

 俺は声も上げずソファから転げ落ちながら、尚も解せぬこの展開を心の中で少しだけ呪ったのだった。



 ――これは、随分後の事になって判明する事である。
 ――アスナ達が言っていたのは、いわゆる……し、《下着アイテム》などの、女の子特有の、極めてプライベートなアイテム群の事を指していたらしかった。
 ――それを、俺は彼女に「見せろ」と強要していたのだと、誤解されていた。
 ――そんなこと分かるわけがないだろ!? と、判明した時に内心絶叫した俺を、一体誰が責められよう?
 ――まったく、女とは実に不思議で面倒な生き物である。弱冠16歳にして俺は、しみじみとそう痛感した。

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