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ソードアート・オンライン リング・オブ・ハート
15:"ソレ"
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ほどに、武器をソードスキルのアシストに頼らずともあんなにも使いこなせていた……。アシスト無しでの振りの速さや、斧やスタッフの乱舞捌きにはどういった理由があるんだ?」

 俺の問いに、ユミルはむうと少しだけ唸った。

「……そうだね。今に思えば、このビルドが結果的にボク自身にうまく適合してくれたのは、ホントに幸運そのものだったと思うよ。ゲームってあんまりしたことなかったから。当時はよく分からないまま、ただ単純にみんなとは違うプレイヤーになろうってだけで、自分の思うままにスキルの修行とかしてた。……振りの速さや武器捌きについては……」

 ユミルは少しの間、口をつぐんだ。その理由を、俺はその時点で何となく察した。

「ボクのリアルに関係してるから……言わない。……ただ、『現実での経験』があってのこと、ってだけは教えておいてあげる」

「……ああ、それだけ聞ければ十分だ。流石にタブーには触れないよ」

 相手の現実世界の頃の話を聞くのはタブーとされている。そこまで立ち入った話をするつもりは、ユミル以外としても毛頭無い。
 ……死神事件が、現実と関連する事件ではない事だと祈りたい。例外として、相手から話し出してくれる場合はいいのだが……逆に聞き出すのは非常に苦労するし、何よりも……それは俺を含めた全てのプレイヤーを愚弄するマナー違反行為だ。……誰だって、無為に自分の過去は知られたくないに決まっているのだから。

「その……ところでさ」

 と、ここで今度はユミルから口を開いた。

「ステータスでの質問は、それだけ? 他に……その画面を見てておかしいと思ったトコは、もう無い……?」

「え? えーっと……」

 言われて俺達は首を傾げる。そして、今一度ユミルのステータス画面に目をやってみる。
 ステータス情報は、彼女のプレイヤーネームであるユミル――正式な綴りは《Ymil》――の下部に羅列している。
 最大HP値、筋力値、防御値、敏捷値。それらを主軸に様々な情報が示されているが、先程俺達が述べたユミルの極端なビルドの特徴を除けば、他は特に怪しいと思われるところは何もない。
 強いて述べていくならば……敏捷値はそこまで数値振りされていないが、軽い衣服のみを身に付けているので装備品の重量による敏捷値の減少が極めて少なく、結果、それは並の戦士達とあまり変わらない。防具と防御値がいささか頼りなさ過ぎるが、最大HP値はレベル70台当時の俺と大して変わらない、ごく一般的な数値をしている。

「うん……他には特に、もう無いけど」

「本当に?」

 しつこくユミルは尋ね重ねた。
 それに俺は、はて、と首を傾げる角度をさらに強めた。
 じっと俺を見つめてくるその目は、何故か……期待の念がこもっている気がしたからだ。

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