第1章 闇艦娘の提督
第01話
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“ずるり……ばしゃぁッ”
人がすっぽりと包みこめるほどの大きさがある卵型のカプセル。
そのカプセルの底が破れ、中から透明な緑色の液体と共に少女が流れ落ちた。
何も身につていない少女はぼんやりとしながら、周囲を見渡す。
「どこ……ここ……」
そう口走ってしまうほどに、少女の目には異様な光景が写り込んでいる。
無数の培養ポッド、何かの装置、薄暗い空間、ここは何かの研究所のような場所であった。
そして床や壁は、有機的とも無機的ともいえない奇妙な物体でできている。
少女は暁型二番艦駆逐艦、名は響という。
響はこの場所に漂う不気味で重苦しい雰囲気に身を震わせた。
日の光が全く入ってこない、ひどく薄暗い空間。
立ち込める空気はとても冷たく、身にまとわりついてくる。
「提督がお待ちよ」
不意に声をかけられた響は驚いて身を揺らした。
響の目の前に、ひとりの艦娘が立っている。
艦娘は長門型二番艦戦艦、陸奥である。
艦娘は全くと言っていいほどに気配がなく、目の前にいても気がつかないほどであった。
ずっと視界に入っていたはずなのに、そこにいると気づくことができなかった。
そんなありえない体験をした響は、目の前にいる艦娘を凝視する。
艦娘は真っ黒い衣装で身を包んでいる。
闇と同化してしまいそうなほどに深い黒色の衣装は、艦娘の内面を映し出しているように思えた。
全身を黒に包みこんだ艦娘は、不気味を通り越して恐怖すら感じる。
「ついてきなさい」
そう言って黒い艦娘は響に背を向け、部屋から出ていこうとする。
状況が掴めずに困惑している響ではあったが、言われるまま黒い艦娘についていくことにした。
地面に倒れ込んでいる響は身を起こし、立ち上がろうとする。
「あっ」
響は立ち上がることができなかった。
手足ががくがくと震え、力が入らない。
身を起こすのがやっとの状態である。
まるで長い期間身体を動かさなかったような、身体が動くことを忘れてしまったかのように、身体が全然いうことをきかない。
不気味な空間の中でひとり取り残されてしまった響は、必死になって身体に力を込める。
まるで生まれたての獣のようにぶるぶると身を震わせながら、響はやっとの思いで立ち上がる。
そして壁を伝いながら、黒い艦娘が出ていった扉まで歩いていく。
「ひぅッ」
扉のふちにつまずいてしまった響は、べしゃぁと顔から倒れ込んでしまう。
身体のいうことが利かないせいで、とっさの受け身をとることも出来ない。
それでも響は身を震わせながら、必死になって立ち上がる。
「早くなさい」
黒い艦娘が目の前に立っている。
まるで瞬間移動してきたかのよう
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