第六話 化学部の佳杜
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」
呆れながらでも、ちゃんと方法を与えてくれる辺りはさすが紗理奈だった。
権城は、クラブ棟の中の一室、化学部の部室に向かった。
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「ここか。」
化学部の部室は、クラブ棟の奥の奥、少し光の陰った場所にあった。ハッキリ言って、ちょっと怪しい。他に部屋もあるだろうに、こんな辺鄙な所に好んで部室を構える辺り、何とも言えない陰キャの匂いがプンプンしている。
(そもそも、化学部って何なんだ?実験でもしてるのか?つまりは、好き好んで理科の勉強を部活にしてるって連中なんだよな。)
権城の脳裏には、グリグリメガネの集団が容易にイメージされた。そういう子達と、これまでの学校生活で仲良くした経験はあまりない。が、自分の服を取り戻す為なら、四の五の言ってられない。権城はドアをノックした。
「すんませーん」
一度目の呼びかけにも、返事は返ってこなかった。
「すんませーん」
二度目の呼びかけにも返事なし。
部室の中の灯りは灯っているのにも関わらず。
(よし!入ってみるか!)
グズグズしていると、下校時間を越えてしまいかねない。権城は返事を待たずに、そのドアを開けた。
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「恋する〜ハピネスクッキ〜♪」
ドアを開けたそこには、予想外の光景が繰り広げられていた。マイクを持って、歌っている女の子が1人。一つにくくった黒い髪、クールなメガネ、腰をくねらせ、歌って踊っている。
「!!」
女の子は権城の方を振り向いた。機嫌良く歌っていた先ほどから、一瞬で殺気立った表情に。
その変わり身の速さ、尋常ではない。
「将来〜そんな悪くないよ〜♪」
その女の子の殺気を和らげるべく、権城は歌の続きを歌って踊る。しかし女の子はそんなボケに構わず、権城にぐい、と詰め寄った。
「……秘密にして下さい。」
「はい?」
よく見ると、女の子の制服は少し高等科とデザインが違った。中等科の生徒らしい。
「私が歌ってた事。秘密にして下さい。バラしたら、殺します」
「は、はぃ」
やたらめったらキツい視線を送られ、権城はあっさりと頷かざるを得なかった。
「……何の用ですか?」
「あ、この服の汚れ、落として欲しいんだけど」
権城が差し出した服を女の子はひったくって、部屋の奥のカーテンの向こうへと消えていった。
ジャブジャブ……液体を使っているらしい音が聞こえてきて、その作業は思いのほか早く終わったらしい。女の子がカーテンの向こうから出てきた。
「はい。綺麗になりました。最近どうも、化学部が洗濯専門家と思われているようで癪ですが、これと引き換えに、さっきの事は忘れて下さいね。」
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