暁 〜小説投稿サイト〜
相棒は妹
志乃「兄貴が表彰状受け取るとか滑稽」
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
間は、大きなショック一つで人生を命取りにするって事を。

 でも、それを経験した私は、乗り越えた先にあるもう一つの結果を知った。

 それは、人間は挫折を経験する事でちょっとだけ強くなるということ。前を向けば、まだやり直せるってことを。

 別に同じことをやり直すだけじゃない。好きな事に没頭すればいい。自分が楽しいと思える事に時間を使えばいい。それだけでも大きく変わる。

 私はピアノで一度くじけたけど、ピアノが『好き』だから続けてる。『報われる』とかは考えた事無い。だって、ピアノが好きなんだもん。

 兄貴がどうなのかは知らない。ここずっとマトモな会話してないし。でも、長い間続けてた剣道を退学って形で辞めた事は兄貴にとってかなり痛いんじゃないかな。

 だから、私は自然と考えた。兄貴に『楽しい』と思わせようって。兄貴に素の笑顔を作ってもらおうって。

 高校入試が終わって合否が出た次の日、私はお母さんに相談した。やっぱり、自分だけじゃなかなかアイディアが浮かばなかった。

するとお母さんは、

 「志乃が伊月のために考えてくれて、お母さん嬉しいわ!コスプレしちゃう!」

 とか変なテンションにさせちゃったので、次に変態親父に相談してみた。

 「ねえ変態。兄貴って何か好きな事あったりするの?」

 「お父さんを変態と呼ぶのは止めなさい。私は立派なパパだ!」

 「兄貴って、何か好きな事あったりするの?」

 「あ、ハイ。えと、伊月は剣道の他にカラオケとか読書が好きなんじゃないでしょうか?」

 「ありがとう、お父さん」

 「おお、五年ぶりに志乃がお父さんと言ってくれた!お礼に私が勉強を教えよう!さぁ、部屋に行こう」

 「死ね変態。燃やすぞ」

 そういう経緯から、兄貴の趣味について知る事が出来た。

 でも、だからっていきなり兄貴をカラオケに誘うのもなんか変だ。だって、数年間挨拶程度しか交わさなかったのに、いきなりおかしいでしょ。

 私は悩みながら、ガヤガヤ動画っていう動画サイトをなんとなく覗いた。気晴らしにオバキオさんっていうバンブラPの投稿曲聴こうかと思ったの。

 そして、そこに答えがあった。

 ああ、私と兄貴で動画を作ればいいんだ、って。

 私がピアノで兄貴がボーカル。原曲を引っ張ってきて機材を用意すれば、私達だけのオリジナル動画が作れる。それはとても素敵な事だと、私はその時本当に思った。

 だから、私は兄貴をカラオケに誘う事を決意した。

 実際は二月にはそう決意してたんだけど、実際は三月の中旬になっちゃった。まさかあんなに話しかけづらくなってるなんて思わなかったんだもん。

 階段で立ち止まって何か考え事をしてる兄貴が本気で邪魔だ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ