トワノクウ
第十一夜 羽根の幻痛(二)
[3/3]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
、言葉にしがたい芯の強さがある。
「坂守神社は妖には容赦しない。だが、彼女は間違いなく篠ノ女空という俺の友人だ。篠ノ女が俺達と同じ人間なのは俺や長渕がよく知っている。それをさも貴様らの同類であるように語るのは、俺が許さない!」
好きな男の子に庇われている。状況を忘れさせるほどの歓びと恍惚と――かすかな不安。
「梵、神社の手勢が近付いているようであるぞ」
「……刻限か。帰るぞ、空五倍子」
あっけなく、梵天は空五倍子の腕に乗った。空五倍子が翼を広げる。
「くう。君は間違いなく萌黄の娘だ」
梵天が言い残した直後、空五倍子が飛び上がり、彼らの姿は夜空へと消えた。
(お母さんの娘、か……)
くうは自分の顔、唇の右のほくろを撫でた。
自分が、若い頃の母親によく似ているのは自覚があった。ただし、女性特有の輝かしさがあるだけ母親のほうが美しかったが。
(娘だからって、お母さんみたいに育つとは限らない)
あの言い方から察するに、梵天はくうに母に近しい性質か働きかを期待している。くうは困ってしまう。篠ノ女空は篠ノ女萌黄にはなれないのだと知った梵天がくうに失望したらどうしよう。
「大丈夫か、篠ノ女」
「あ、はい。問題ありません」
「問題ないって顔してないぞ」
潤が心配してくれている。気をしっかり持たねば。
「天狗が言ったことなら気にするな。天座に接触しのだって向こうが勝手に呼びつけただけのことだ。篠ノ女には非はないって、銀朱様にも俺からちゃんと説明するからさ」
な、と笑いかける潤は、学校で、楽研で毎日を過ごした潤その人だ。くうは少しだけ安心して微笑むことができた。
Continue…
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ