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トワノクウ
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第十一夜 羽根の幻痛(一)
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かける。

「これは俺が君の両親を知っているか、という問いの答でもある」

 くうは固唾を飲んで梵天の次の言葉を待った。

「二人はかつてこの世界を支える者であり、壊す者でもあった」

 ――一人は帰っていった。朽葉の言葉が蘇る。

 考えたことはある。ひょっとしたら両親のどちらかはこの世界を知っているのではないか。この世界に訪れたのではないか。そう考えると符合することがいくつもある。

「知りたいかい? 彼らがこのあまつき≠ノ何をして、何を残したのか」

 梵天の微笑はとてもおだやか。くうはいきなり情報を詰め込まれたせいで真っ白になった頭で、かくんと頷いた。

「だったら、――さあ」

 梵天が男にしては細い手を差し伸べる。その手はとても魅惑的な舞踏への誘いに感じられた。
 くうは夢遊病患者のような足取りで梵天の前まで歩いて手を……

「篠ノ女から離れろ、妖!」

 炸裂する銃声。くうは音源を探して頭を巡らせるがどこにも該当人物がいない。なぜかといえば、その人物はたった今やっと到着したからだった。

「潤君!?」
「近づくな篠ノ女、そいつらは天座だ!」

 メガネを外した潤が草木を掻き分けて、くうを庇いつつ、梵天たちにピストルの照準を合わせた。

「あまざって何ですか?」
「最も天に近い場所にいる妖、言っちまえばそれだけ強い、妖を統べる妖だ」

 説明する間も潤のピストルは梵天から外れることはない。敵意だけを抽出した横顔は、くうの知る中原潤にはありえないものだ。近寄るな、視界に入るな、と大好きな少年の目が語る光景が息を停める。

「――空五倍子」
「み、巫女達は本当にまだ来ないのである! こやつが単騎で来たとて我の責任ではないわ!」

 梵天に睨めつけられて、空五倍子が体躯に似合わずひょうきんに慌てる。梵天は溜息をついた。

「しかたない。今宵は諦めよう」



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