第六話、月村
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んど特別な理由がない限りこの時間帯は『小学校』なる公共の教育施設に赴いているはずなのだから。
ふむ、小学生くらいの子供が一人で喫茶店にいるというのも変な話か。なら、なにかしらの理由をつけてテイクアウトしてもらうか。
「こんな時間に…学校はどうしたのかしら?」
「ああ、少し前にここら辺に引っ越してきたばかりなんです。駅前に美味しい喫茶店があるって聞いたから、荷解きをがんばってるお母さんに買ってきてあげようと思って…」
少し、芝居がかりすぎたか?
「あら、そうなの。偉いわねぇ、じゃあシュークリームなんてどうかしら?オススメよ」
俺の懸念を余所に、店員さんは予想以上に俺の嘘を信じてくれたらしい。シュークリームがオススメだというから、それを三つ注文しておく。一日くらいなら冷蔵庫に入れておけば持つだろう。
「ありがとうお姉さん」
「いえいえ、気をつけて帰ってね」
見送りまでしてくれる店員さんに手を振って帰路につく。
それにしても、いつも年寄り臭いと言われる口調を年相応に直してみたが、やはり結構恥ずかしいな。よほどのことがない限り、もうこの口調はやめておこう。主に、俺の精神衛生上の都合で。
……あ、このシュークリーム美味しい。
「ふぅ、変わらないな…ここも」
一通り今日の内に済ましておかなければならないことを終えた俺は、久しぶりに訪れた地球での家、マンションの一室をぐるりと見回した。ここにくるのは少なくとも二年ぶりくらいだが、少し埃が積もっていただけで荒らされていたなんてことはなかった。
郷愁にかられる、ことはなかった。いやむしろ、懐かしいと感じることもない。ただ単に、荒らされていないことに安心しているだけ。
ただの記録となった記憶から、感情を引き出すことはできなかった。
「…枯れてるな」
なんとなく、そんな言葉で片付けられることではない気がしたが、そう言わずにはいられなかった。
翌日。カーテンの隙間から朝日が差し込んできて目が覚める。
「ああ…整理してる途中で寝たのか」
見渡すと、足場のないくらいに散らかった部屋。昨日、埃を被っていた必要最低限の家具を整理している途中で睡魔に負けてしまったのを思い出し、頭を掻く。
「…忍さんから連絡くるまでには終わらせるか」
フェイトとアルフが来る日だから、綺麗な状態で迎えねば。
「ウンディーネ、今何時だ?」
『早朝の4時頃です。マスターの年齢から考えて、まだ寝ていたほうがよろしいかと』
「ん…そうしたいが、これじゃ寝心地が悪すぎてな。二度寝できる気分じゃない」
床に散らばった各種家具を半目で睨む。こいつらのせいで、今
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