1人じゃない
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満月の光が、少し古びた室内を照らしていた。
大きな本棚と小さいテーブル、質素なベッドだけが置かれた部屋―――――いや、小屋というべきか。
近くには豪邸―――――カトレーン本宅があり、侍女や料理人が生活する建物があり、少女が眠る小屋は本宅から少し離れた場所にあった。
ふわり、と継ぎ接ぎだらけのカーテンが風に流れ揺れる。
積もってすぐの、誰も踏みしめていない雪のように白い肌に、青い髪がかかる。
僅かに開いた口からは冷たい吐息が零れ、華奢な体躯を薄手の毛布が覆っていた。
「……ティア、起きてる?」
キィ、と小さな音が響いたと同時に聞こえる、柔らかい女性の声。
その声を合図に、少女―――――ティアはゆっくりと目を開いた。
眠いのか少しだけとろんとした目を瞬かせ、首を傾げる。
「お母様にお父様?私に一体どんな用で……」
普段、両親が自分に会いに来る事は無い。
本宅で偶然顔を合わせても、すぐに目を逸らされるか顔すら見てもらえないかのどちらかが絶対だった。
そんな両親がこんな夜遅くに小屋にやって来るとは――――――。
(ただ事ではない、か…)
当時3歳(の割に思考と行動が大人びすぎている)ティアは、密かに警戒心を強める。
そんな娘に対し、母親セリアと父親アスールは微笑んでいた。
――――――ティアが、怪しむほどに。
「あのね、ティア。私達考えたの……貴女はこの一族で嫌われている。生まれてこなければよかったのにと思われてる」
そんなの、とっくに知ってる。
誰もその感情を隠そうとしない。むしろ、その感情を押し付けて追い詰めているようにも感じる。
この家に暮らす人々の嫌悪の対象、それがティアだった。
彼女に関係ない事でも、何か嫌な事があれば全てティアに押し付けられる。
それで怒られる事にだって、それで“お仕置き”と称して剣相手に木刀で戦うのにだって、もう慣れている(因みに剣VS木刀は、大きなハンデがあるにも拘らず毎回木刀が勝利している)。
「だからな、ティア。私達は決めたんだよ」
「…何を?」
カチ、と小さな音がした。
その音が耳に飛び込んできた瞬間、ティアは全てを理解する。
(ああ…なるほど)
竜人であるティアの聴覚は優れている。
だから、この小屋と同じくらいの範囲の音ならどれだけ小さくたって聞き逃さない自信はあった。
勿論、先ほどの小さな音も。
それに気付いているのかいないのか、アスールは“それ”を構える。
「――――――死んでくれ、ティア」
それは―――――魔法銃だった。
青い瞳を僅かに細め、こちらを見ている。
ふとセリアに目を向ければ、彼女も魔法銃を構えていた。
思わず溜め息をつく。
(いつかこういう
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