1人じゃない
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する意味も理由もないのだから。
(…私は、それが怖かったんだ)
唐突に気づく。
どんどん低くなって、見下ろしていた世界が近づいてくる。
もし、高さが完全になくなってしまったら、自分は変わってしまうのだろうか。
長い時間をかけて築き上げた自分の1人の世界を崩してまで誰かと関わりを持って、何かが変わるのか。
自分の生まれながらの境遇や、周りからの嫌悪が変わるのか―――――。
(変わる事は怖い。だから、私は変わるのを諦めた。誰とも近づかないで、1人でいる事を選んだ……)
結果として、1人でいる事は出来なかったのだけれど。
それはお節介で妹思いな異母兄弟の兄の仕業で。
それは彼女を放っておかなかった――――放っておけなかった、周りの人達の仕業で。
そもそもの話、加入したギルドが妖精の尻尾であった以上、1人でいる事なんて最初出来なかったのかもしれない。
(だけど、それは全て私の考えすぎだった)
ふ、と。
薄い笑みが浮かぶ。
どこか清々しい微笑みが。
(変わっても変わらなくても、根本的に私は私にしかなれない。誰といようと私は私で、私は…1人じゃ、なくて……)
魔水晶の向こうで、『ティア?』と呼ぶ声がした。
そういえば通信中だった、と思い出し、ティアは目を伏せる。
そして―――――見えないと解っていて、微笑んで口を開く。
「――――――助けに来て」
そう言うのに、迷いはなかった。
普段なら口が裂けても言わない事を、当然のように。
「情けないけど、枷で動けない。魔法は使えるけど、よく考えたら今は迂闊に動かない方が身の為なのかもしれない……っていうか、そもそも扉には鍵がかかってるみたい」
冷静になれていなかったのは、ティアの方だった。
珍しい事もあるものね、と思いながら、続ける。
「私、根拠のない事は信じない性なの。だから、根拠を提示なさい」
ふわり、と。
ポニーテールに結わえた青い髪を解く。
バックから、彼女のトレードマークとも言える白い帽子を取り出し、被る。
帽子の下から、整った強気な表情が覗いた。
「私が1人じゃないと言うなら、私を助ける事でそれを証明して」
答えを待った。
待ったのは約3秒程度。
ナツは、変わらない明るい声で、迷いなく答える。
『解った!絶対助けてやる!だから待ってろよティア!』
『んじゃ後でな!』と、こちらの返事も聞かずにナツは一方的に通信を切った。
通信の切れた魔水晶を見つめ、微笑む。
(やっぱり……好きだ)
こうやって、頼めばすぐに
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