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Element Magic Trinity
1人じゃない
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、ティアの過去に気づいていた――――もしくは、それなりに察しがついていたら。
きっと、イオリは何も聞かなかっただろう。聞いたところで答えてはくれないと解っていたから。
―――――――だから聞かずに、ただ傍に居た。辛い事があった時に、その辛さを分け合えるように。
どんな時も人前では泣かずに、いつも1人になってから声を押し殺して泣くティアの為に。

『イオリはもういねえ。認めたくねえけど…死んじまった』

声のトーンが落ちた気がした。
イオリはギルドの人気者だった。
いつだって明るくて、人の悲しみに対して自分の事の様に泣いて、誰かの為に、いつだって頑張っている人――――――。
それが、ティアの師匠だった。

『だけど』

ナツが紡ぐ。
イオリと約束した、イオリに役目を任された。
だから、という訳じゃない。
それが理由の1つだと言うだけで、理由は他にも山ほどあって、全部言ってたらキリがないから1つを代表的な理由として。
今、ティアと話しているのはナツだけなのだから。
他に伝えられる人は、いないのだから。







『お前にはオレが―――――オレ達がいる。イオリ以外にもオレ達がいる。1人じゃねえんだ』







――――――1人じゃない。
ナツはそう言った。
その言葉が、ティアにとってどんなモノかを知らずに。

「―――――――っ!」

思い出せば、ずっと1人だった。
血の繋がりやギルドでの関わりを見るのなら、1人だったというのは嘘になるだろう。
が、それは全て表面上の話。

(私、は……)

ずっと、物心ついた頃から心を閉ざしていた。
壁で心を覆って、どれだけ登っても辿り着かないような高い場所で世界を見下ろしていた。
誰も1人の世界を壊そうとしなかったし、弟も兄もティアの好きなようにさせてくれていたし、満足だったのに。

(私は……)

いつからか、『高い場所』の高さが低くなっていく。
単独行動よりチーム行動が増えた頃からか?
チームに入った頃からか?
エルザの頼み―――鉄の森(アイゼンヴァルト)の一件に手を貸した頃からか?
ハルジオンの街で、騙されるルーシィに忠告した頃からか?
―――――――いいや、全部違う。

(私はっ……!)

きっとそれは、その前から。
火竜(サラマンダー)の噂を聞いたナツとハッピーとルーに対して、街中に(ドラゴン)がいる訳ないと言った頃から。
いや、もしかしたらもっと前――――森バルカンに襲われそうなナツを、特に大きな理由もなく助けた頃からかもしれないし、絶対氷結(アイスドシェル)の氷を溶かそうとするグレイに止めた方がいいと言ったあの頃からかもしれない。
本当に心を閉ざしているのなら、そんな忠告を
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