1人じゃない
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日が来るとは思ってたけど…随分なバカね、この2人は。銃を向けられて、私が怯えるとでも思ってるのかしら)
怯えはない。恐怖だって微塵もない。
あるのは、どうしようもない呆れだけ。
当時のティアでも、武器を持つ事すら慣れていないような両親相手なら普通に戦えるほどの戦術は叩き込まれている。
「…いつから親は子供を殺しても良くなったの?」
「世間的には私もアスールも罪人ね…だけど、この罪はお母様がきっと隠蔽してくれる」
「だから私達の罪は外部には知られない。お前が死んでも、悲しむ人はいない。喜ぶ人はいるだろうけど」
その通りだ。
ティアが死んで悲しむ人はいない。喜ぶ人は大勢いる。
人間として狂っている、と思う。
人の死に泣けとは言わない。泣きたくても泣けない人だっているのだから。
ただ、いつから人間は人が死んだ時に“喜ぶ”という選択が出来るようになったのか。
いつから、そんな不適切な感情を選択肢に入れるようになったのか。
―――――――いつから人間は、力の有無でここまで差別し差別されるような存在になったのか。
(自分勝手だわ。ワガママすぎて生かしておく気も失せそう)
欠伸を堪える。
ここに来た大勢の、シャロンによって雇われて連中のようにしてやろうか、と考えが横切る。
ある者は天へと飛ばし、ある者は地に沈め、ある者は腕を切り落とした。
それが、この小屋に来て小屋の主を狙った者の末路。
死にはしないが無事に生かしておく事もしない、残忍でありながら殺人ではないギリギリのライン。
「さよなら―――――我が忌み子」
そう呟いたのは、父だったか母だったか。
ティアの記憶には、言葉はあるが声はない。
小説を読んで、その台詞を覚えているのと同じ事。
声なんて覚える気にもなれない。
どうせ、彼等も彼女の記憶の中で薄れ消えていく存在なのだから。
――――――――銃声が2つ、響いた。
窓だった。
目を開き、まず目に飛び込んできたのは窓。
続いて壁と魔水晶の柱、次に自分の状況(つまり、枷をはめられ動けない)。
見上げれば星座が描かれた天井、下を向けば魔法陣と古代文字。
「…あ……」
数回頭を横に振ると、意識が覚醒してきた。
立ち上がって窓に近づこうとして、途中で動けなくなる。
何事かと目を向けると、枷から鎖が伸びている。
はぁ、と溜息をついて玉座に戻り脚を組むと、頬杖をついた。
(どうやら呆気なく捕まったみたいね…全く、情けない事この上ないわ)
眠っている間に何が起こっていたかを彼女は知らない。
だから、頭の片隅でこう考える。
(アイツ等もこの迷宮を見て諦めたかし
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