第五話 土を耕し実りを待つ
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
キイキしている。掃除だの洗濯だの、普段からメイドとして働いてるジャガーの事だから、こういう雑用には慣れているのだろう。立派だなぁ……権城は感心する。
そしてそんな心の持ちようは真似れるとは思えない。
「おーい、ジャガー」
「あ、姿ぼっちゃま!」
権城がグロッキーになっているその時、野球場に新しい人の影が現れた。それも何人も。
ジャガーの主人にして、中等科3年の新道姿だ。姿が、和子や、あと何人かを連れてきている。
「ぼっちゃま、これは一体どうして……」
「ジャガーが朝早くから少ない人手でグランド整備をしているというので、僕の知り合いを募って手伝いに来たんだが……」
「ありがとう!本当にありがとう!そしてお願いします!」
権城は姿の申し出を、ジャガーが断ってしまわないうちに強く了承した。さすが姿だ。下々の民にも気を配ってくれる王様の器だ。これはありがたい。
中等部の生徒を含めた一同は、あと半分ほど残っているグランド整備に取りかかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
(あぁ、やっぱり何人も居るとはかどるなぁ……シニアのグランド整備の、これでも半分くらいの人数だけど……)
権城は解放されたような気分になっていた。
たった2人でやっていた頃が嘘のように、手っ取り早くグランドが均されていく。
「権城先輩、もっと腰を低く」
「えっ?」
「それでは下半身に効きませんよ。せっかく整備をするんですから、ついでにトレーニングの意識を持って」
そう権城の姿勢を注意した姿のトンボがけは、股関節が後ろに引かれ、背筋が地面と並行になるレベルで姿勢が低く、まるでスクワットである。その低い姿勢を保ったまま、恐ろしいほどの速さでトンボが前後に動く。雑に、速くやっているわけではなく、きちんと整備されているのが恐ろしい。
「権城先輩は、甲子園を目指していると聞きました。ならば、どんな小さな事でも鍛錬に結びつけないと」
「お、おう……」
権城は「何というストイックさだよ」と口をあんぐり開けつつ、そのまま感心するだけで終わらせたかったのだが、こういう風に追随を要求されては、年上な手前、やらない訳にはいかない。
姿と同じように、低い姿勢を保ったままトンボを動かす。
(き、きつい!)
見た目通り、やはりキツかった。権城の下半身は一気に張り詰める。そして……
「あぎゃぁああああ!!」
しばらくすると、権城の悲鳴が響き渡った。
足が攣ったのだ。痙攣の痛みに、権城はゴロゴロとグランドを転げ回る。
寝不足で疲労も溜まっているので、こうなっても仕方が無い。
「あらあら」
「ダメだよ姿君〜無理強いしちゃぁ〜」
ジャガーはその様子をクスクスと笑い、和子は姿に口を尖らせた。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ