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Ball Driver
第五話 土を耕し実りを待つ
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キイキしている。掃除だの洗濯だの、普段からメイドとして働いてるジャガーの事だから、こういう雑用には慣れているのだろう。立派だなぁ……権城は感心する。
そしてそんな心の持ちようは真似れるとは思えない。

「おーい、ジャガー」
「あ、姿ぼっちゃま!」

権城がグロッキーになっているその時、野球場に新しい人の影が現れた。それも何人も。
ジャガーの主人にして、中等科3年の新道姿だ。姿が、和子や、あと何人かを連れてきている。

「ぼっちゃま、これは一体どうして……」
「ジャガーが朝早くから少ない人手でグランド整備をしているというので、僕の知り合いを募って手伝いに来たんだが……」
「ありがとう!本当にありがとう!そしてお願いします!」

権城は姿の申し出を、ジャガーが断ってしまわないうちに強く了承した。さすが姿だ。下々の民にも気を配ってくれる王様の器だ。これはありがたい。

中等部の生徒を含めた一同は、あと半分ほど残っているグランド整備に取りかかった。



ーーーーーーーーーーーーーーーー


(あぁ、やっぱり何人も居るとはかどるなぁ……シニアのグランド整備の、これでも半分くらいの人数だけど……)

権城は解放されたような気分になっていた。
たった2人でやっていた頃が嘘のように、手っ取り早くグランドが均されていく。

「権城先輩、もっと腰を低く」
「えっ?」
「それでは下半身に効きませんよ。せっかく整備をするんですから、ついでにトレーニングの意識を持って」

そう権城の姿勢を注意した姿のトンボがけは、股関節が後ろに引かれ、背筋が地面と並行になるレベルで姿勢が低く、まるでスクワットである。その低い姿勢を保ったまま、恐ろしいほどの速さでトンボが前後に動く。雑に、速くやっているわけではなく、きちんと整備されているのが恐ろしい。

「権城先輩は、甲子園を目指していると聞きました。ならば、どんな小さな事でも鍛錬に結びつけないと」
「お、おう……」

権城は「何というストイックさだよ」と口をあんぐり開けつつ、そのまま感心するだけで終わらせたかったのだが、こういう風に追随を要求されては、年上な手前、やらない訳にはいかない。
姿と同じように、低い姿勢を保ったままトンボを動かす。

(き、きつい!)

見た目通り、やはりキツかった。権城の下半身は一気に張り詰める。そして……

「あぎゃぁああああ!!」

しばらくすると、権城の悲鳴が響き渡った。
足が攣ったのだ。痙攣の痛みに、権城はゴロゴロとグランドを転げ回る。
寝不足で疲労も溜まっているので、こうなっても仕方が無い。

「あらあら」
「ダメだよ姿君〜無理強いしちゃぁ〜」

ジャガーはその様子をクスクスと笑い、和子は姿に口を尖らせた。
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